研究課題/領域番号 |
23550231
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
谷本 智史 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (50303350)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | キトサン / バイオミネラリゼーション / 炭酸カルシウム / 有機無機ハイブリッド / バイオミメティック / 微粒子 |
研究概要 |
本研究では、甲殻類の外骨格や貝類の真珠などの形成の仕組みであるバイオミネラリゼーションという作用に倣った方法で、天然多糖であるキトサンをコア、炭酸カルシウムをシェルとする有機無機ハイブリッドコアシェル型複合粒子を作製した。初年度は、キトサンコア粒子の粒径制御に関わるパラメータの検討を主に行った。キトサンコア粒子の作製は、キトサン酸性水溶液/トルエン分散液を中和することで行う。分散液中の液滴のサイズ・形状を制御することで、キトサンコア粒子の形態制御をすることができると考えた。現在までに、キトサンの濃度、作製時の温度、分散液を安定化させるための界面活性剤の濃度などのパラメータを検討し、概ね安定して作製することのできる条件を得ることに成功した。また、キトサンの分子量を変化させると調製パラメータが大幅に変わることがわかってきたため、それらの関係性に関しても調査を継続している。さらに小粒径のコア粒子を得るため作製時に超音波照射を行った。その結果、粒径を小さくすることに成功した。炭酸カルシウムのバイオミネラリゼーションの条件に関しては概ね確立することに成功した。バイオミネラリゼーションの際に補助剤として添加するポリアクリル酸が炭酸カルシウムの析出に影響を及ぼすことが明らかになったものの、そのメカニズムに関しては継続検討が必要である。この研究で作製する複合粒子はコアに天然多糖高分子を用い、シェルに炭酸カルシウムを用いており、環境調和型材料としての意義が大きい。本研究で目的の1つとしている粒径の制御が確立できたならば、体内使用を含む様々な領域への応用が期待できる。また、コア部分に用いているキトサンは抗菌作用なども有しており、新たな薬物担持基材としての期待も大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、目的を大きく分けて2つ掲げている。一つ目はキトサンをコア、炭酸カルシウムをシェルとするコアシェル型複合粒子の作製と作製条件の確立である。複合粒子はコア粒子の作製とバイオミネラリゼーションという2段階の手順で作製するが、バイオミネラリゼーションの条件に関しては確立できたと考えている。また、コア粒子の粒径制御に関しては、キトサン分子量の効果が明らかになっていない部分もあるが、ある程度の理解は進んでおり、目的のうち、初年度部分の達成度は高いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
二年目はキトサンコア粒子の粒径制御の継続調査および、複合粒子の応用可能性の探索を予定している。応用可能性の探索は大きく2つに分けられる。1つは複合粒子のキャスト薄膜について、もう1つはキトサンコア粒子への薬剤の含浸とマイクロカプセル化についてである。キャスト薄膜は走査型電子顕微鏡で観察し、粒子の配列状態を評価する。粒径が揃ったものができていれば単層の厚みの超薄膜とし、粒径にばらつきがあれば複層の薄膜を目指す。マイクロカプセル化に関しては、まず蛍光色素をキトサンコア粒子に含浸させることから試みる。蛍光色素の疎水性・親水性とキトサン粒子との親和性が重要であると考えているため、蛍光色素の種類、官能基を変えながら調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は主に物品費に割り当てている。次年度は多くの試料作製が予定されているため、ほとんどが試薬などの消耗品となる予定である。また、今年度からの繰越金に関してはほとんどが、購入を予定していた顕微鏡用デジタルカメラをより廉価なものにしたため生じたものである。次年度は参加を予定していた学会(キチン・キトサンシンポジウム)が遠隔地での開催となったため、その参加費用に当てることも予定している。
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