研究課題/領域番号 |
23550231
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
谷本 智史 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (50303350)
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キーワード | キトサン / 炭酸カルシウム / 薬物徐放 / DDS / コアシェル / マイクロカプセル / 有機無機ハイブリッド |
研究概要 |
本研究では、甲殻類の外骨格や貝類の真珠などの形成の仕組みであるバイオミネラリゼーションという作用に倣った方法で、天然多糖であるキトサンをコア、炭酸カルシウムをシェルとする有機無機ハイブリッドコアシェル型複合粒子を作製した。初年度にはキトサンコア粒子の作成条件が確立できた。二年度目である24年度は、研究実施計画に掲げていた「マイクロカプセルとしての利用」に関する研究、中でもキトサンマイクロコア粒子へのモデル薬物導入の試みに注力した。 モデル薬剤としては、ウラニン(親水性官能基を導入した蛍光色素フルオレセイン誘導体)を選択した。ウラニンはフルオレセインと同様の蛍光挙動を示す親水性の色素である。モデル薬剤をキトサンマイクロ粒子に取り込むには、次のような手順を試みた。キトサンの酢酸水溶液にモデル薬剤を添加しておき、界面活性剤を含むトルエン溶液と撹拌混合した状態で水酸化ナトリウムによって酢酸を中和した。キトサンは中性域で析出するため、微粒子として得られる。析出・微粒子化の際にモデル薬剤は粒子中に取り込まれた状態となると考えられる。 キトサン粒子を粉砕したものの蛍光測定の結果、得られたキトサン微粒子の内部にはウラニンが導入されていることがわかった。また、ウラニン導入キトサン微粒子からは酸性域で裏人が徐放されることも明らかとなった。 キトサンはこれまで廃棄に回されていた天然物であり、薬物の徐放担体への利用を検討することは非常に意義が有る。今後、当初の計画にそって炭酸カルシウムによるコアシェル複合化が成功すれば、薬剤放出の制御がより容易になると期待できる。 また、当初の計画では25年度に予定していた金属とキトサンのコアシェル複合化にも既に着手しており、複合微粒子の調製手順・条件に関する知見も得られ始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度に計画していた「マイクロカプセルとしての利用」に関しては計画通り、進行しており、今後の展開も期待できる状態である。同様に計画していた「複合粒子のキャスト薄膜」に関しては、実施できていない状態である。これは本研究の複合粒子の医用用途への適合が高いことを鑑みた結果である。その代わり、25年度に計画していた「金属とキトサンとの複合微粒子」に関する研究に着手しており、全体として評価すると二年度目における達成度は高いと考える。
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今後の研究の推進方策 |
25年度はモデル薬物含浸キトサン微粒子に対する炭酸カルシウムとのコアシェル複合化を検討する。何も含浸していないキトサン微粒子に対する複合化条件は確立されているので、基本的にはそれに準じた条件探索を行う。現在用いているモデル薬剤は親水性のものであるので、疎水性の高いものでの検討も行い、将来の応用研究への知見とする。また、キトサン微粒子の表面への金属の複合化は既に着手しており、継続して検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は主に物品費に割り当てている。次年度は多くの試料作製が予定されているため、ほとんどが試薬などの消耗品となる予定である。また、次年度は参加を予定している学会(キチン・キトサンシンポジウム)が遠隔地での開催となったため、その参加費用にも当てることを予定している。
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