研究課題/領域番号 |
23550234
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
安川 雅啓 高知工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (10332082)
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研究分担者 |
植田 和茂 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70302982)
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キーワード | ペロブスカイト / セラミックス / 酸化物 / 熱電特性 |
研究概要 |
1.固相反応法及び錯体重合法により、ペロブスカイト型スズ酸塩固溶体であるBa1-xYxSnO3(x=0-0.2)、Sr1-xYxSnO3(x=0-0.1)、Ca1-xYxSnO3(x=0-0.1)の合成を試み、Y固溶と電気伝導性について調べた。Ba系、Sr系、Ca系のいずれについても、1400℃焼成後の粉末X線回折パターンには不純物であるY2Sn2O7が生成し、電気抵抗が極めて高かったことから、Yの固溶は確認できなかった。Ba2+、Sr2+、Ca2+のイオン半径に対してY3+のイオン半径が小さいことが非固溶の原因として考察された。 2.固相反応法及び錯体重合法により、ペロブスカイト型スズ酸塩固溶体であるCa1-xLaxSnO3(x=0-0.1)の合成を試み、Ca2+に対するLa3+の固溶と電気伝導性について調べた。1400℃焼成後の粉末X線回折パターンからLaの一部固溶を示唆する回折ピークのシフトが確認されたが、電気抵抗は極めて高かった。この原因として、La3+の固溶がごくわずかであることに加え、CaSnO3におけるSn-O-Sn結合のジグザグ構造が電子を移動しにくくさせていると考察された。 3.錯体重合法により合成した(Ba1-xSrx)0.995La0.005SnO3(x=0-1)について、粉末X線回折パターンのリートベルト解析から結晶構造精密化を行った。Sr固溶にともない、Sn-O結合距離が若干減少していくのに対し、Sn-O-Sn結合角が連続的に減少していきSnO6八面体の連結が傾斜していくことが明らかになった。これにより、Sr固溶にともなう電気伝導率の減少は、Sn5s軌道とO2p軌道の重なりの減少に起因することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.錯体重合法と放電プラズマ焼結法により(Ba1-xSrx)1-yLaySnO3のセラミックスを作製し、熱電特性を評価したところ、Ba0.995La0.005SnO3のセラミックで最も高い性能指数が得られた。Sr1-xLaxSnO3及びCa1-xLaxSnO3のセラミックスは電気伝導率が低く、高い性能指数は得られなかった。 2.(Ba1-xSrx)0.995La0.005SnO3について粉末X線回折パターンのリートベルト解析から結晶構造精密化を行い、Sr固溶にともなう電気伝導率の変化と結晶構造との相関を解明した。すなわち、Sr固溶にともなう電気伝導率の低下がSn-O-Sn結合角の減少に起因していることを明らかにした。 3.錯体重合法と放電プラズマ焼結法によりBa1-xYxSnO3、Sr1-xYxSnO3、Ca1-xYxSnO3の合成を行ったところ、Yは固溶せず固溶体は生成しなかった。 以上の研究成果から、ペロブスカイト型スズ酸塩固溶体における熱電材料候補として、Ba0.995La0.005SnO3が最適組成であり、結晶構造ではSn-O-Sn結合角が180°(直線的)であることが重要であることが明らかになった。これにより、当初の研究目的に対してほぼ順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した最終年度の研究実施計画に従い研究を遂行する。すなわち、ペロブスカイト型スズ酸塩からなる熱電材料候補として最適組成であることを見出したBa0.995La0.005SnO3について、錯体重合法で合成した重合体の熱分解温度を変えることにより、粒径をナノスケールで段階的に制御したセラミックスを作製する。これらのセラミックスに対し、出力因子と熱伝導率の測定から性能指数を評価し、粒径制御と性能指数の相関を明らかにする。粒径の微細化による熱伝導率の選択的低減により、性能指数の向上を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費の平成25年度への繰越金額は約103万円となっている。これは、BaSnO3、SrSnO3、CaSnO3に対するY固溶体が生成しなかったこと及び生成したCa1-xLaxSnO3が高抵抗であったことにより、当初計画していたこれらの試料に対する熱伝導率測定などの熱電特性評価等を実施するに至らなかったことが主因である。 平成25年度直接経費は平成24年度からの繰越金額を含めて約213万円となっている。この内、約99万円を主要な物品として熱電特性評価のための電極形成に用いるスパッタコータの購入に充てる計画である。これまでは電極形成のために金電極を試料に圧着する方法をとっていたため、圧着時に試料が破損したり測定中に金電極が試料から外れたりするといった問題があった。これらを解消して効率よく評価を実施できるように、金電極をスパッタリング法で試料表面に形成することにする。この他、物品費(試料合成や評価のための消耗品)20万円、旅費(試料合成や研究発表のため)30万円、その他(熱伝導率依頼測定など)64万円として使用する計画である。
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