研究課題/領域番号 |
23550236
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
林 繁信 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (00344185)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 固体NMR / 固体酸 / 触媒 / 酸性質 / 多孔質材料 / プローブ分子 / 計測・評価 |
研究概要 |
多孔質材料における吸着、分離、触媒などの機能は、細孔やメソ孔のサイズだけではなく、その内表面の性質に大きく依存する。本研究では、多孔質材料における内表面の性質を計測・評価する技術を確立することを目的としている。機能として酸触媒機能に着目し、酸強度および酸量の計測・評価を行う。手法として固体NMR法を用い、酸性質を担う「水素」を直接観測するとともに、分子をプローブとして細孔やメソ孔に導入してその分子の挙動(吸着サイト及びダイナミクス)を固体NMR法によって詳細に観測することにより、内表面の性質を評価する。細孔もしくはメソ孔を持つ物質としては、ゼオライトやその類縁化合物、メソポーラス物質を取り上げる。固体NMR法は、原理的には、非破壊・非接触で測定できる手法であり、in situ測定に適している。 平成23年度は、固体NMR法により、「水素」を直接観測して、その量と酸性質を計測・評価する方法を開発した。プロトン(1H)の固体高分解能NMR測定により、無機固体酸塩の水酸基、固体酸触媒であるH型ゼオライトのブレンステッド酸点の測定を行った。 多孔質材料の内表面は空気中の水分に敏感なため、NMR測定は空気中の水分を完全に遮断した状態で行う必要がある。固体高分解能NMR測定を行うためには、マジック角回転(MAS)を行うための特殊な試料管(MASローター)に試料をバランスよく充填する必要がある。ガラス製真空ラインを使用して試料を加熱脱水したのち、その試料を全く空気中に出すことなく窒素ガスを充填したグローブバッグに移し、窒素雰囲気下でMASローターに試料を充填した。この操作手順を確立することにより、非常に吸湿性の高い多孔質材料の表面水酸基の1H固体高分解能NMRスペクトルを測定することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空気中の水分の影響を完全に遮断した状態で試料を調製しMASローターに充填する手順を確立し、非常に吸湿性の高い多孔質材料の表面水酸基の1H固体高分解能NMRスペクトルを測定することができるようになった。 当初の目標は達成できたと思われるが、適用した対象物が数種類のゼオライトに限られた。これは、東日本大震災の影響による大型装置の利用制限、夏場の電力使用制限、地震の影響による固体NMR装置の故障などが重なり、十分なマシーンタイムが得られなかったのが原因である。特に、固体NMR装置の故障は復帰に5か月ほど費やし、代替の固体NMR装置を借用して使用することにより多少測定を進めることができた。 一方で、平成24年度に予定している、プローブ分子の導入による多孔質材料の内表面の酸性質を調べる予備実験を進め、プローブ分子の導入を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、分子をプローブとして細孔もしくはメソ孔に導入し、その分子の挙動(吸着サイト及びダイナミクス)を固体NMR法によって詳細に観測することを予定している。 酸点として働くかどうかは、反応分子に代わるプローブ分子を作用させて調べる必要がある。プローブ分子は、容易に手に入り取り扱いの容易な化合物であること、NMRの検出感度が高いこと、固体酸触媒の酸強度に対応したシグナル位置(化学シフト)を与えることなどの必要条件を満たさなければならない。 我々は、プローブ分子として、リン(P)を含む塩基性有機化合物、トリメチルホスフィンオキシド(TMPO)を選択して、多孔質材料の内表面の酸性質を調べることを既に試みた。31Pは天然存在比100%であり、NMRにおいて比較的感度の高い核種である。また、化学シフト範囲も広い。このプローブ分子を多孔質材料に導入して固体NMR測定を行ない、試料調製上のいくつかの問題点を明らかにした。一つは、プローブ分子を溶媒に溶かして導入したが、溶媒分子も同時に吸着してしまうこと、もう一つは、溶媒を除去する場合にプローブ分子も一部除去されてしまうことである。従来の報告では全くふれられていなかったことである。そこで、新たに、固体であるTMPOを気相から導入することが可能であることを見いだした。気相法では溶媒を用いないでプローブ分子を導入でき、今後の応用が期待される。 本研究では、プローブ分子としてTMPOに代表されるリン(P)を含む塩基性有機化合物を使用する。溶媒を用いた方法(溶媒法)と気相法によりプローブ分子を導入して、TMPOの吸着状態と吸着量、溶媒分子の吸着状態と吸着量を固体NMR法により調べ、溶媒法と気相法の利点、欠点を比較する。また、気相法は、適用例が限られているので、種々の多孔質材料への適用を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、平成23年度の繰越金を含め、2,100千円の研究費を使用することができる。 物品費 75万円(内訳: 固体NMR装置用消耗品 55万円、試薬 20万円)、旅費 60万円、人件費 60万円、その他 15万円(学会参加費など)の使用を計画している。
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