研究課題/領域番号 |
23550236
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
林 繁信 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 上級主任研究員 (00344185)
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キーワード | 固体NMR / 固体酸触媒 / 酸性質 / 計測・評価 / 多孔質材料 / プローブ分子 |
研究概要 |
多孔質材料における吸着、分離、触媒などの機能は、細孔やメソ孔のサイズだけではなく、その内表面の性質に大きく依存する。本研究では、多孔質材料における内表面の性質を計測・評価する技術を確立することを目的としている。機能として酸触媒機能に着目し、酸強度および酸量の計測・評価を行う。手法として固体NMR法を用い、酸性質を担う「水素」を直接観測するとともに、分子をプローブとして細孔やメソ孔に導入してその分子の挙動(吸着サイト及びダイナミクス)を固体NMR法によって詳細に観測することにより、内表面の性質を評価する。細孔もしくはメソ孔を持つ物質としては、ゼオライトやその類縁化合物、メソポーラス物質を取り上げる。固体NMR法は、原理的には、非破壊・非接触で測定できる手法であり、in situ測定に適している。 平成24年度は、分子をプローブとして細孔もしくはメソ孔に導入し、その分子の挙動(吸着サイト及びダイナミクス)を固体NMR法によって観測した。プローブ分子として、リン(P)を含む塩基性有機化合物、トリメチルホスフィンオキシド(TMPO)を用いて、多孔質材料の内表面の酸性質を調べることを試みた。31Pは天然存在比100%であり、NMRにおいて比較的感度の高い核種である。また、化学シフト範囲も広い。従来から用いられてきた溶媒を用いた方法(溶媒法)と我々が提案した気相法によりプローブ分子を導入して、TMPOの吸着状態を固体NMR法により調べた。溶媒法では多孔質材料によって溶媒が残留したが、気相法では溶媒の影響をなくすことができた。また、気相法では、プローブ分子の導入温度を上げることによってより均一に導入することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、分子をプローブとして細孔もしくはメソ孔に導入し、その分子の挙動(吸着サイト及びダイナミクス)を固体NMR法によって観測した。従来から用いられてきた溶媒を用いた方法(溶媒法)と我々が提案した気相法によりプローブ分子を導入して、TMPOの吸着状態を固体NMR法により調べて、溶媒法と気相法の利点、欠点を比較・検討した。その結果、気相法では溶媒の影響をなくすことができ、プローブ分子の導入温度を上げることによってより均一に導入することができた。また、気相法は、適用例が限られていたが、種々の多孔質材料への適用を試みることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、プローブ分子の導入法の最適化を図る。特に、気相法におけるプローブ分子の導入条件の最適化を検討する。多孔質材料に導入されたプローブ分子は、細孔およびメソ孔の内表面の酸点と相互作用を行う。酸強度は均一ではなく、強度の強い点からプローブ分子が吸着すると考えられる。また、酸点より過剰量のプローブ分子が導入されると酸点と直接相互作用できないプローブ分子が出てくる。プローブ分子をナノ空間に均一に導入することにより、酸強度の分布、酸点の全体量を知ることができる。 以上により、酸触媒機能を持つ多孔質材料における酸性質を計測・評価する技術を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、平成23年度の繰越金を含め、1,500千円の研究費を使用することができる。物品費 15万円(内訳: 固体NMR装置用消耗品 10万円、試薬 5万円)、旅費 60万円、人件費 60万円、その他 15万円(学会参加費など)の使用を計画している。
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