研究課題/領域番号 |
23550237
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
外山 吉治 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50240693)
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研究分担者 |
窪田 健二 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40153332)
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キーワード | フィブリノゲン / クライオゲル / フィブリン / 水晶振動子マイクロバランス / フィブリノゲン分解産物 |
研究概要 |
当該年度の研究実施計画はa)とb)である。 a) 分子間相互作用部位の特定 フィブリノゲンをプラスミンで処理すると、その処理時間により様々な分解産物を得ることができる。本年度はフィブリノゲン分子のα鎖のC端(αC-domain)が切断されたFragment Xおよびフィブリノゲン分子両端の球状領域であるFragment Dを調製することができた。得られた分解産物がクライオゲルを形成するか否かを濁度測定より調べた。実験はコントロールとして6.0 mg/mlのインタクトフィブリノゲン水溶液、6.0 mg/ml Fragment XおよびFragment D水溶液を2℃に冷却後、波長500 nmで濁度の経時変化を測定した。その結果、コントロールのインタクトフィブリノゲンでは濁度上昇見られたが、Fragment XおよびDでは濁度に変化が見られなかった。Fragment Dはその構造からもゲルを形成しないことが推測できる。しかしながら、Fragment Xはトロビンを作用させるとゲル化することが知られており、クライオゲル形成にはαC-domainの存在が必須であることが分かった。 b) フィブリンゲルとの比較(尿素およびNaClの添加効果) これまでの我々の研究から、生体内で形成されるフィブリンゲルとクライオゲルとの間に共通の形成メカニズムが存在することが示唆された。本実験では、フィブリノゲンクライオゲルおよびフィブリンゲル形成における相互作用が、静電的あるいは水素結合に起因するか否かを知るために尿素およびNaClの添加効果について調べた。濁度測定の結果から尿素およびNaCl添加により、クライオゲルとフィブリンゲルともに遅延・抑制効果が見られた。特にNaClの添加では、フィブリンゲルと比べてクライオゲルで顕著な抑制効果が見られたことから、静電的相互作用が支配的であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業期間における具体的な研究目標は以下1)から5)である。 1) 水晶振動子マイクロバランスを用いた低温下でのフィブリノゲンの集合体およびクライオゲル形成過程の測定、2)濁度の波長依存性の測定によるフィブリノゲン線維の構造解析、3)クライオゲル形成へのフィブリノゲン分解産物の影響よる分子間相互作用部位の特定、4)クライオゲル形成におけるフィブリノゲン付加糖鎖の影響、5)トロンビン作用によるフィブリンゲルとの形成メカニズムの比較。 研究計画による昨年度の達成目標は上記の1)および2)で既に実績報告済みである。残る達成目標は3)から5)であり、本年度はその中から3)および5)を行い、研究実績概要に記した通り、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ交付申請書に記載した研究計画に沿って順調に研究が進展している。従って、今後も当初の研究計画に沿って進めて行く予定である。次年度の具体的な研究目標は、クライオゲル形成メカニズムの解明に向けたフィブリノゲン分子間の相互作用部位をさらに詳しく同定するために、QCM法を用いて低温下おけるフィブリノゲンと分解産物との相互作用の有無を直接測定する。さらに、フィブリノゲン分子に存在する4つの付加糖鎖の役割を調べる。具体的にはN-グリコシダーゼを用いて糖鎖を切除したフィブリノゲンを作製し、クライオゲル形成に与える糖鎖の影響を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では具体的な研究目標で示した4)の「クライオゲル形成におけるフィブリノゲン付加糖鎖の影響」を本年度行う予定であったが、実験の効率を考え5)の「トロンビン作用によるフィブリンゲルとの形成メカニズムの比較」を先に行った。そのため、糖鎖切除に使用する酵素類の購入が必要となくなり238,078円が未使用額となった。この未使用額は今後予定している付加糖鎖切除の実験に充てる。従って、次年度の研究費の使用計画の変更はない。
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