研究課題/領域番号 |
23550238
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小形 信男 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70108249)
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研究分担者 |
中根 幸治 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50292446)
島田 直樹 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 特命助教 (10545007)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 溶融静電紡糸 / レーザ / ナノファイバー |
研究概要 |
本研究の目的は、帯状レーザ溶融静電紡糸過程における溶融体に形成されるテーラーコーンの形成機構を解明することである。この解明は、テーラーコーンから繊維が吐出・形成されるため重要である。単一な高分子シート材料の溶融体に形成されるテーラーコーンの特徴は形態的にわかりにくいため、非相溶ブレンド高分子シートからの繊維形成をブレンド界面の変形情報から考えることとした。そのため、H23年度は、汎用性高分子材料であるポリプロピレン(PP)とポリ乳酸(PLA)が任意の体積比で溶融混練したブレンドシートを、また、PPとアルカリ可溶ポリエステルのブレンドシートを溶融混練により得た。帯状レーザ溶融静電紡糸装置を改良し、その装置を用いて、上記のブレンドシートから繊維形成を行い、形成された繊維からPLA成分はクロロフォルムで、アルカリ可溶ポリエステルは苛性ソーダで溶解させ、PP繊維を得た。その結果、PPの体積分率が50%以下の場合、平均繊維径が500nm以下の繊維が得られること、また、PPの体積分率が50%以上の場合、平均繊維径が1μm以上の繊維が得られることが分かった。次に、テーラーコーンの形成過程を調べるために、テーラーコーンの断面を切断し、紡糸過程における粒子の形態変化を検討した。その結果、PP成分が多い場合、レーザ溶融部でPPの粒子が著しく会合していること、他方、PP成分が少ない場合、PPの粒子は会合せず、その粒子からのナノファイバーが得られることがわかった。また、PP粒子は、テーラーコーン内部ではあまり変形せず、テーラーコーン先端近傍で著しく変形することがわかった。この結果から、テーラーコーン内部ではなくテーラーコーンの極めて先端近傍に繊維がナノファイバーになる鍵があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の計画は、汎用性高分子材料からの繊維形成源であるテーラーコーンの特徴を検討することであり、おおむね順調に進展していると考えている。また、汎用性高分子に対して得られた結論が、エンプラ(ポリフェニレンスルフィド(PPS),ポリアリレート)とエチレンビニル共重合体(EVOH)のブレンド物に対しても成立するか次年度検討する。このとき、エンプラとEVOHの融点は大きく異なるが、レーザ溶融であるため、ブレンド繊維が得られることは確認している。H23-H24年度で想定している結論は、テーラーコーン内部ではなく、極めて先端にナノファイバー作製の鍵があることが言えるかどうかである。最終目的は、単一成分からなる高分子シートから溶融によりナノファイバーを得ることであるため、本実験結果が最終目的に対する意味合いを検討している。すなわち、本研究で得られた成果から、テーラーコーン先端近傍がナノファイバー作製の鍵であることが明らかになれば、テーラーコーンからの繊維吐出部に集中した検討を行う。具体的には、吐出後の紡糸空間温度の制御をおこない、この制御が繊維径に及ぼす効果を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
1.エンプラ(ポリフェニレンスルフィド(PPS),ポリアリレート)とエチレンビニル共重合体(EVOH)のブレンド物に対して、平成23年度に明らかにされた結論が成立するか検討する。ただし、ブレンドは、PPSの場合は、粉砕化し粒子とし、EVOHとのブレンドはEVOH溶液に粒子を分散させてブレンド試料を得る。さらに、ポリアリレートは不織布とし、それにEVOH溶液を含浸させてブレンド試料を作製する。2.紡糸空間の温度が制御できる装置を改良して、紡糸空間温度を詳細に制御できるようにし、この温度が繊維径に及ぼす効果を単一の高分子材料を試料として検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.紡糸空間温度制御装置の改良のための機械部品・電子部品購入2.高分子試料(エンプラ・汎用性樹脂)および薬品類の購入3.論文投稿のための費用4.学会等の出張旅費
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