研究課題/領域番号 |
23550241
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
宮田 貴章 (QTRANCONG 貴章) 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50188827)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 傾斜構造 / ポリマーブレンド / 光重合・架橋 / 相分離 / 核生成・成長 / 共連続構造 |
研究概要 |
平成23年度では、高分子傾斜構造を光誘起相分離を行うために下記の基礎的実験を行い、得られた成果は下記の通りである。1)Poly(ethyl acrylate) を合成し、また分子鎖上に蛍光マーカーであるrhodamine B を修飾した。Ethyl acrylate モノマーのラジカルの重合法を改良し、比較的に分子量の揃った分散指数を有する線状 Poly(ethyl acrylate) が得られた。(PEAR, Mw =170,000)。2)Rhodamine B をラベルした poly(ethyl acrylate)[PEAR] とmethyl methacrylate (MMA) の混合物の光反応誘起相分離の実験を行った。Lucirin TPO を重合開始剤として365 nmの紫外光の照射で混合系内に (PMMA) を重合した。その重合によってできたPMMA の分子量 MPMMA をGPC により、測定したところ重合反応の自己促進の時間(to)まで、MPMMA がほとんど変化せず、ほぼ一定の値を保っていたが、照射時間が特性時間(to)を超えると重合反応は特異的な自己促進振る舞いを示す。一方、MPMMA は照射時間(to)になると低分子量側以外に新たな高分子量(10倍大きい)の成分が突然に現れ、短い時間内に重合収率と共に高分子量成分の成長も停止することがわかった。すなわち、照射時間が特性時間(to)を過ぎると粘度の急激な上昇と共に相分離過程が停止され、形成されたモルフォロジーが決定されることがわかった。 今後、上記した基礎的な実験結果に基づき、試料の深さ(Z)方向や表面(X-Y)に光照射により、高分子混合系の傾斜モルフォロジーを制御し、有用な表面やバルクの特性を有する高分子傾斜材料の設計を確立させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)H23年度に予定した Rhodamine-B をラベルした Poly(ethyl acrylate) (PEAR)の合成を完了した。さらに、重合温度を制御することにより、枝分かれの PEAR の生成を抑制し、線状の試料が得られた。2)光重合反応で誘起された相分離において内部構造のないDroplets構造は反応によって混合系は準安定領域内の核生成・成長機構で形成されることがわかった。これは強い光強度で混合系が不安定(スピノーダル)領域へ突入させて、得られた共連続構造と対比している(論文投稿準備中)2)強い光強度を用いて照射する場合、試料内に光強度の傾斜が形成されるが、光強度を変化低強度から高強度へ向かって、相分離によって形成したドロップレットのサイズが小さくなっていくことがわかった。すなわち、ドロップレットの傾斜構造を光照射によって制御できることがわっかた。
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今後の研究の推進方策 |
1)H24年度に光強度を変化させて、共連続構造とドロップレット構造の傾斜構造を作製する。2)当研究で開発した「コンピュータ支援光照射(CAI)法」を用い、試料の深さ方向や(X-Y)平面内の傾斜のみならず、(X-Y-Z)の3方向におけるMorphology の特性長の傾斜を構築・制御を行う。3)試料表面において、表面の自由エネルギー分布を(X-Y)方向の傾斜構造の構築で変化させ、水の接触角測定で、この表面の自由エネルギー分布をマッピングする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年に当研究室の設備である共焦点レーザー顕微鏡(LSM Pascal型)に搭載するアルゴンイオンレーザーのチューブ(Carl Zeiss 製、100万円)を購入する予定である。その他は消耗品に充てる予定である。
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