研究課題
単層カーボンナノチューブ(SWNT)の固体構造形成過程の解明とその制御を目的とし、希薄溶液からSWNTの結晶化を行った。作製に当たっては、我々がこれまで行ってきた「剛直で折れ曲がることのできない高分子」の結晶化の検討で得られた知見を活かし、長さを短く切断したSWNTを用いて希薄溶液からゆっくりと結晶化させた。その結果、明確な晶癖を示すSWNT単結晶が得られた。その構造の特徴を透過型電子顕微鏡で詳細に検討することにより、SWNTの結晶化機構を明らかとした。またSWNTゆえに生じる固体構造およびその形態の特徴を高分解能電子顕微鏡観察結果から明らかにした。さらに得られた知見をもとに、分散性がよく、直線状のSWNT凝集体(SWNTナノフィラー)を作製し、複合体への応用についても検討した。SWNTナノフィラーを用いてポリビニルアルコールとの複合体フィルムを作製した。複合体中でSWNTナノフィラーは凝集することなく個々に分散していることが、光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡観察により明らかとなった。得られた複合体フィルムは透明性が高いことが確認された。得られた複合体フィルムの力学的性質を検討したところ、SWNTナノフィラーの添加により、弾性率が大きく向上することがわかった。その効果は、複合体フィルムを延伸した試料で顕著にみられ、3倍延伸した複合体フィルムでは、わずか0.1wt%のSWNTナノフィラーの添加で弾性率が2倍に向上することが分かった。またSWNTナノフィラーの添加により、熱伝導率も大きく向上することがわかった。熱伝導率向上の効果も、延伸した複合体フィルムの場合に顕著になり、延伸方向に沿った熱伝導率が選択的に向上した。
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Proc. Asian Textile Conference
巻: Vol.12 ページ: S2OR 06-14