研究概要 |
本課題では、コア-シェル構造を持つ高分子ミセルのシェル部を選択的に架橋し、コアとの結合を切り離すことにより、高分子中空ナノ粒子の創製を行うことを目的として研究を行った。原子移動ラジカル重合とニトロキサイド媒介制御ラジカル重合の重合開始能を持つ双頭型の開始剤を合成し、これを用いて官能基を持つ親水鎖(ポリアクリル酸またはポリ(アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル))と疎水鎖(ポリスチレン)が動的共有結合により結合した両親媒性ブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体のミセルに対し、シェル部の選択的架橋を施した。小角X線散乱(SAXS)から、架橋前後でのシェル部の電子密度が大きく変化していることがわかり、選択的架橋がなされたことを確認した。次いで、フリーラジカル存在下でミセル溶液を加熱することで、コアとシェルの切断を試みた。SAXS測定から、加熱処理後のミセルにおけるコアの電子密度は加熱処理前のものと比較して大きく低下していることから、コアとシェルが切断され、コアを形成していた疎水性高分子が系外へ除去され、中空のナノ粒子が得られたことが分かった。しかしながら、コア部を構成する高分子が完全には除去されず、部分的に粒子内に残存していた。これは、シェル部が低密度ではあるが架橋されているため、および、コアの成分に用いたポリスチレンのガラス転移温度が室温より高いため、切断された高分子がミセル外に排出されるために長時間を要するために、完全な除去が達成されなかったと考えることができる。そこで、油-水の液-液抽出システムを適用し、コア部の除去を試みた。このシステムを用いて調製したナノ粒子に対するSAXS測定の結果から、ミセルのコア部の高分子がほぼ除去されたことがわかり、中空ナノ粒子が得られたことを確認した。
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