光学ポリマーの屈折率制御が重要な技術課題となっている。ポリマーの屈折率は、分子鎖のパッキング状態と化学構造で決定される 。我々は、Lorentz-Lorenz式に基づき、ポリマーの繰り返し単位の化学構造のみから屈折率およびその波長依存性(アッベ数)を計算する方法を提案している。本研究では、屈折率を計算する際に基盤となる“原子屈折、原子分散値”および“ポリマー固体中での分子鎖パッキング状態”を決定、解明することにより、提案している屈折率予測法を、様々な化学構造、結合様式をもつ光学ポリマーに対応できるように発展させることを目的とした。 光学ポリマーの屈折率予測に必要な原子屈折および原子分散値を精密屈折率測定から決定する。また、種々の結合様式、分子鎖凝集状態を持つポリマー固体の分子鎖パッキング状態を精密密度測定より解明する。そして、決定した原子屈折、原子分散値およびパッキング係数を用いてポリマーの屈折率を繰り返し単位の化学構造から計算し、実測値との比較を行い、屈折率予測法の適用性を検証するとともに、予測精度の向上を図ることが全体の研究計画であった。 本研究では、フッ素、窒素、ベンゼン環およびケイ素の原子屈折及び原子分散値、そしてシリコーン樹脂の分子鎖パッキング状態を実験的に明らかにした。そして、解明した値を用いて計算したフッ素ポリマー、ポリアミド、芳香族ポリマー、およびシリコーン樹脂の屈折率とアッベ数は実測値とよく合うことを確認した。
|