研究課題/領域番号 |
23560003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吹留 博一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10342841)
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研究分担者 |
川合 祐輔 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20451536)
小嗣 真人 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (60397990)
米田 忠弘 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30312234)
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キーワード | グラフェン / SiC / Si基板 / 微細加工 |
研究概要 |
前年度に行なったSi(100)基板微細加工を援用したグラフェンの位置選択的エピタキシャル成長に関する研究結果を基に、「位置選択的にエピ成長させたグラフェンのナノ構造制御」を目的とした研究を行なった。この目的を達成するために、次の二つの項目、(項目1)グラフェンの積層構造の低速電子顕微鏡(LEEM)・原子間力顕微鏡観察、及び、(項目2)グラフェン/SiC界面化学構造の光電子顕微鏡(PEEM)による観察、を実施した。 (項目1)微細加工基板上に露出した微視的なSi(100)及びSi(111)面上に作成した、グラフェン/SiC(100)/Si(111)及びグラフェン/SiC(111)/Si(111)の積層構造を、LEEMを用いた顕微低速電子回折(micro-LEED)により調べた。その結果、(111)上ではグラフェンはBernal積層をとることが明らかとなった。これに対して、(100)上では、グラフェンは非Bernal積層を取ることが明らかとなった。このような微視的な面上での積層構造は、対応するベタ膜(微細加工無し基板)での積層構造と同じである。 (項目2)微細加工基板上に露出した微視的なグラフェンの界面化学構造を、光電子顕微鏡を持ちいて、微視的に(空間分解能:70nm程度)調べた。その結果、グラフェン/SiC(111)界面には、バッファー層が形成されることが明らかとなった。それに対して、グラフェン/SiC(100)界面にはバッファー層が形成されないことが明らかとなった。このような微視的な面上での界面化学構造は、対応するベタ膜(微細加工無し基板)での界面化学構造と同じである。このバッファー層がグラフェンのエピ成長のテンプレートして働くと考えると、この界面化学結合の変調が、上で述べた積層構造の変調をもたらすと考えることが出来る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(平成23年度)Si(100)基板微細加工を援用したグラフェンの位置選択的エピタキシャル成長を実現するために、三つの研究細目「Si(100)の基板の微細加工」、「微細加工Si基板上へのSiC薄膜形成技術の確立」「微細加工Si基板上に成膜したSiC表面のグラフェン化」を実施した。全ての項目の遂行に成功し、無事、当該年度の実施計画を完遂することが出来た。 (平成24年度)「位置選択的にエピ成長させたグラフェンのナノ構造制御」 を目的とした研究を行なった。この目的を達成するために、次の二つの項目、「グラフェンの積層構造の微視的観察」、及び、「グラフェン/SiC界面化学構造の微視的観察」、を実施し、無事、当該年度の実施計画を完遂することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度及び平成24年度の研究計画は、全て実施・完遂することが出来た。よって、今後の計画は、当初の計画通りに行なう。平成25年度は、「位置選択的にエピ成長させたグラフェンのナノ物性制御」を目的とした研究を行なう。その為に、次の二つの研究細目を実施する:(1)グラフェンのバンド分散の微視的測定、(2)グラフェンのナノスケール電気伝導の微視的な測定。これらの細目は、平成23年度及び平成24年度で得られた研究結果を有効活用して、効率的に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の使用計画は、今後の推進の方策の所で述べたような当初の研究計画内容に沿うものとする。但し、次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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