研究概要 |
本研究は,安価な水溶性ポリマーを用いた導電性プラスチックと, 生物由来の視覚機能タンパク質を組み合わせた「柔らかい微分応 答光センサー」を開発し,ロボットビジョンやマシン操作に適用することを目標としてて3年間推進してきた. 最終年度は,より安価で柔軟なデバイスの実現のため,(株)綜研化学の協力を得てITOガラスを導電性ポリマーに変更した.4種類のサンプル(WED-SM, IW-103, IW-108, AN-SO3-T)で成膜した電極の性能評価を行ったところ,最も表面抵抗が小さかったのは,IW-103であった(10^3 Ω/sq).しかし透過率は1.77%と非常に低かった.IW-108は透過率で他の2種類よりも優れていたが,表面抵抗が最も高く(10^6 Ω/sq)導電性が良くなかった.また,導電性を上げるために膜厚を厚くすると,透過率が非常に低くなり,また曲げに対する耐性が下がってクラックが入ってしまった.そこで綜研化学からPETフィルム塗工品(WED-SM/PVA,表面抵抗がITOの約100分の1)を入手し,ITOと同型のサンドイッチセルを作製したところ,ITOセルのほぼ100分の1の光電流応答が得られた. 23,24年度はすべてITOガラスを用いて「積層化による出力増強」「受光部のパターニングによる速度センシング」を行い,マイクロマウスロボットの制御に必要な目標値2マイクロAの光出力が得られ,また4光走査方向と速度が同時測定できることを確認できたため,最終年度にITOガラスを導電性ポリマープラスチックに変更したが,導電性と入射光透過率の壁に阻まれてITOガラスセルで得られた結果には届かなかった.しかし大面積のセンサーの作製は可能であり(現在50mm × 50mm),電解質溶液をゲル化することによって,曲げに対する強度の向上は十分可能であることがわかった.
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