研究課題/領域番号 |
23560006
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
福井 一俊 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80156752)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | エリプソメータ / 真空紫外光 / 放射光 / III-V窒化物半導体 |
研究概要 |
産総研によって試作されたユニークな可視-真空紫外(VIS-VUV)対応エリプソメータ(エリプソ)を分子研の放射光施設UVSORの3m直入射型分光ビームラインBL7Bとドッキングさせ、VIS-VUV領域で連続して複素誘電率を測定可能とし、通常のVIS領域エリプソでは測れないワイドバンドギャップ半導体であるIII-V窒化物半導体のバンド端近傍及びそれ以上のエネルギー領域での複素誘電率を絶対測定することを目的としている。 そのための第一ステップとして、このエリプソ試作機をそのままの状態でBL7Bと接続し、問題点を洗い出すことを本申請採択以前から行ってきた。その中で最大の問題点は、エリプソを真空槽ごと回転する際に起こる問題で、(1)は回転軸そのものとBL7Bの出射光の光軸の両者を如何に合わすかであり、(2)は重たい真空槽を回転することによるエリプソの各部分のガタツキや歪みが、試料への照射位置のずれや入射角度のずれとなって現れて、試料からの反射光を受ける検光子を兼ねた受光ダイオードへの入射位置・角度のずれとなってしまうことである。これがある許容範囲を超えると測定値の解析は不可能となる。 しかし、本申請採択以前には原因を特定するまでは至っておらず、初年度の課題となっている。本年度3回あったマシンタイム(BL7Bを使うことができる時間:1回4日)で上述した問題点の(1)に関しては、エリプソを支持する架台を今回再製作するに当たって必要な調整機構と調整の手順を決めることが出来た。また、(2)に関しては試料ホルダーの部分のたわみが非常に問題であること、試料ホルダーの光軸調整に必要な回転と並進機構を維持しつつたわみを解消する方法もほぼ解決するところまで来た。(2)の問題に関しては超高真空部品のがたつきや部品間の組み付け順序などが決め手で、試行錯誤の結果であったため研究計画で立てた予定よりも遅れている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「概要」でも述べたが、エリプソにおいては、光軸のぶれがないことが必須であるが、本課題で中心となるVIS-VUVエリプソは、放射光利用を前提とした多くのユニークな利点を持つものの、試料を真空槽ごと光軸まわりに回転しなければならない弱点を持つ。超高真空部品は一般にステンレス製のため重量が重いため、真空槽本体はアルミ製となっている。しかし、特に回転・チルトそして並進調整機構を必要とする試料ホルダーはアルミ製とはならず、かつ光軸から離れた部分に重量が存在するためどうしてもモーメントが効いてしまい、調整機構の持つガタツキが問題となった。超高真空部品をセレクトしたうえで、その組立順序や試料ホルダの剛性、新たな支持具を試行錯誤した結果、ガタツキによる受光ダイオード上での光点のずれをほぼ許容範囲まで減らすことが出来るようになってきている。しかし、このために予定の2倍以上のマシンタイムを消費し、この結果を反映した架台等の設計が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点では、遅れの原因となっている光軸合わせと受光ダイオード上での光点のずれを解決することに注力したいため、前者については架台の設計、後者についてはマシンタイムでの実験で解決することを優先する。 一方、これまでのマシンタイムでの成果から本年度の課題であるエリプソ上流に挿入する偏光子はなくても可能かもしれない可能性が出ている為、上述したガタツキの制御向上とともに実験結果の精度も向上する為、その都度評価を進める。 架台設計に関してはすでに進行しているが、位置調整の方法に関してxyz軸の3軸調整とするか、その他の方法を採用するか速やかに検討し、製作段階に移行する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度備品に計上していたコントローラについては施設の好意で供与して頂くことができたが、その分以上ガタツキ対策で超高真空部品の購入に使われている。次年度もガタツキ対策が最重要課題のため費用を投入していく。 架台製作に必要な金属材料等の実費費用と外注費用、及び架台の軸駆動の電動化を目標としているため、一軸ステージとモータの購入を検討している。
|