研究課題
本課題で新しく開発した試料支持法と直径40μmの硬X線を用いた角度積分型光電子分光法で軽水および重水を用いた超臨界水中でいくつかの水素化段階に調整した微小Nb水素化物試料の化学状態を分析した。X線回折法によると、合成試料は金属Nb、侵入型NbHおよびNbH2化合物から成り、内殻準位スペクトルにも水素化物の化学シフト成分を観測できたが、調査したどの試料表面も少なくとも10 nmのNb酸化物(Nb2O5)で覆われ、試料内部に水素化物が形成されていることが分かった。また、新しく開発された広角電子レンズと直径2μmのマイクロ硬X線ビームを用いた角度分解型光電子分光を行い、酸化物生成が比較的少ない侵入型NbD試料について深さとともに増加するNb水素化物を見出すとともに、内殻準位の化学シフトだけでなく、表面酸化物と試料内水素化物の価電子帯構造を分離して水素化に伴う価電子帯構造の変化を明らかにし、水素化の証拠を得た。一方、ガラスキャピラリと試料位置を調整するマイクロステージを備えたマイクロイオンビーム分析装置(検出器配置によってラザフォード後方散乱(RBS)法、反跳粒子検出(ERD)法、核反応(NRA)法が可能)を本課題で作製し、AuメッシュのRBS測定から空間分解能を評価した。また、D(3He,p)α核反応イオンビーム分析により、NbD2試料として合成した試料に対してD/Nb=2±0.8の結果を得るとともに、測定装置の問題点を明らかにして改良した。本課題最終年度に実験室建屋の耐震工事が急遽実施されたため、精度の向上や水素化段階の異なる試料の評価、ERD法による深さ分析評価は今後の課題となった。このように、マイクロビーム硬X線光電子分析の新しい解析法とその有用性を示し、新しいマイクロイオンビーム分析の見通しを得るとともに、超高圧超臨界水中における金属水素化物生成の証拠を得た。
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