研究課題/領域番号 |
23560010
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
阿部 友紀 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20294340)
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研究分担者 |
安東 孝止 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60263480)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 紫外光変調器 / 量子閉じ込めシュタルク効果 / ZnO/ZnMgO量子井戸 / MBE成長 |
研究概要 |
本研究の目的は, 励起子結合エネルギーの大きいZnO系II-VI族化合物半導体量子井戸における励起子効果(量子閉じ込めシュタルク効果)を最大限に活用することによって, 超高速の光変調器を実現することである。そのために, まずZnO/ZnMgO多重量子井戸(従来の量子井戸, 二重結合量子井戸, 階段量子井戸)を高抵抗層(i層)にもつショットキ型光変調素子を本研究の開発目標とする。さらに,p型ZnOの作製技術が確立次第PIN型光変調素子を実現する。本研究で扱うZnOは紫外線370nmに相当するバンドギャップを有している。したがって,ZnOを光変調器に用いた場合,量子井戸化を行うとして350~400nmが動作波長のターゲットとなる。この動作波長帯は,現在のBluRayディスクに使用されている405nm紫色LDから,次世代光ディスク用紫外線光源として開発が活発に行われている350nm前後のLDの波長帯である。したがって,本研究で350~400nm帯の超高速光変調器が実現されれば,これらのLD光源を用いて超高速光通信,光記録などが期待される。平成23年度は,光変調器の基礎特性であるZnO/ZnMgO量子井戸の量子閉じ込めシュタルク効果を検証した。本研究では,Mg組成5%~30%のZnMgO障壁層を用いたZnO/ZnMgO多重量子井戸をサファイア基板およびZnO基板上にMBE成長し,紫外透明有機導電膜PEDOT:PSSとのショットキダイオードにより外部バイアス電圧を印加した。電界反射変調分光法により励起子遷移エネルギーの外部印加電界依存性を調べ,有限要素法による電界印加時の理論計算との比較により,ZnO/ZnMgO量子井戸が紫外光変調器に有望であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZnO/ZnMgO単一量子井戸,および結合量子井戸の最適構造理論設計を終え,MBE成長により実際に設計に基づいた量子井戸を作製し,光変調器の基礎動作原理である量子閉じ込めシュタルク効果を検証した。紫外透明有機導電膜PEDOT:PSSを用いたショットキダイオードにより外部バイアス0~10Vを印加して,電界反射変調分光法により励起子遷移エネルギーのシフトがほぼ理論に合致することを実証しており,ZnO/ZnMgO量子井戸の紫外光変調器への有効性を示した。また,Gaドープn型ZnMgOバッファの成長条件およびエッチングプロセス技術を確立し,今後の透過型光変調器の実現に向けた基礎技術を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の結果を基に,光をデバイス上部から透過させる透過型光変調器を作製する。本構造は最も基礎的なデバイス構造であるとともに,2次元集積化を行うことで空間光変調器としても動作可能なデバイス構造である。透過型光変調器実現のため,サファイア基板上にn型ZnMgOバッファ層を成長した後にZnO/ZnMgO多重量子井戸活性層を成長し,表面にはPEDOT:PSSショットキ窓層を形成したショットキダイオードにより,活性層に500kV/cmの外部電界を印加して光変調動作を実証する。透過型では表面反射率の低減が必要であるため,並行して表面無反射膜の最適化を行う。本構造ではp-ZnMgO/n-ZnMgOのダイオード構造が最終目標であるが,現在研究を進行しているPEDOT:PSS/n-ZnMgOショットキーダイオード構造でデバイス開発を進め,デバイスレベルでのp-ZnMgOの実現後にpnダイオード構造のデバイスを作製する。また,基板側n-ZnMgOクラッド層にn-ZnO/n-ZnMgO積層構造による反射層を設け,デバイス上部から入射した光を反射させることにより,反射型光変調器のデバイス検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として,サファイア基板,ZnO基板,MBE用高純度原料(Zn,Mg),PEDOT:PSSなどの購入を計画している。また,本研究で得られた成果を発表するための学会参加を計画している。
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