研究課題/領域番号 |
23560011
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
奥村 次徳 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (00117699)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 窒化ガリウム / プラズマ照射誘起欠陥 / 深い準位 / 光容量分光法 |
研究概要 |
本研究では,窒化ガリウム(GaN)において,プラズマ照射誘起欠陥が導入される過程における光照射の影響,および導入されてしまった欠陥がデバイス中で拡散・消滅するときに,光吸収に伴う電子励起過程が及ぼす影響を解明することを目的として研究を進めている.平成23年度に得られた主な研究成果は以下の通りである. (1)プラズマ照射誘起欠陥導入のメカニズムを解明するために,プラズマ発光と同じ波長帯の紫外光を,イン・プロセスで付加的に照射するための実験系を検討し,既存のプラズマ実験装置に実装した.この装置を用いて,プラズマ発光に比べ2桁以上の強度の紫外光を付加的に照射することで,プラズマ照射欠陥が通常の3倍以上も深く侵入することを見出した.さらに,禁制帯幅以下のエネルギーの可視光照射では,欠陥の増速拡散はほとんど起こらないことを明らかにした. (2)ワイドギャップ半導体の極めて深い準位の評価法として,光容量分光(PHCAP)法の高感度化・高精度化を実現した.この装置を用いて,n型GaNで共通に検出されるミッドギャップ領域の深い準位について,欠陥の基本的物性量である光イオン化断面積のスペクトル(波長依存性)を決定した.プラズマ照射にも,ミッドギャップ領域に深い準位は検出されるが,この欠陥に対する光イオン化断面積の値は,未照射結晶におけるミッドギャップ準位とは1桁以上も違うことから,欠陥構造は異なると推測される. (3)デバイスに導入されたプラズマ照射誘起欠陥のアニール実験を行い,荷電状態および電界強度に対する依存性を明らかにした.欠陥により不活性化されたドナーの再活性化速度には,顕著なバイアス依存性が見られ,その結果,再活性化にはドナー・欠陥複合体の荷電状態と電界が重要であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
付加光を同時照射するためのプラズマ実験装置の改良が,比較的短時間に完了したこと,新しく高感度のキャパシタンスメータを導入できたことにより,光容量分光法の高感度化・高精度化が達成できたこと.
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今後の研究の推進方策 |
欠陥導入機構の解明のために,イン・プロセスでの光照射の実験を引き続き系統的に進め,欠陥の発生・拡散を抑制できるプラズマ装置の設計指針の構築に繋げていく.また,ショトキーバリア・ダイオードを用いた実験により,プラズマ照射誘起欠陥の拡散・消滅過程における荷電状態および電界依存性を明らかにし.理論家の報告結果との比較検討により,ドーパントの不活性化の原因となっている欠陥種の同定に繋げていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として50万円を充てる計画である.主として,GaN基板結晶およびAlGaN/GaNエピタキシャル結晶と電極用金属材料を購入する.30万円は,研究成果発表のための旅費および論文投稿料に充てる予定でいる.
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