研究課題/領域番号 |
23560011
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
奥村 次徳 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (00117699)
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キーワード | 窒化ガリウム / プラズマ照射誘起欠陥 / 増速拡散 / 深い準位 / ネガティブU型欠陥 / 光容量分光法 |
研究概要 |
本研究では,窒化ガリウム(GaN)において,プラズマ照射誘起欠陥が導入される過程における光照射の影響,および導入されてしまった欠陥がデバイス中で拡散・消滅するときに,光吸収に伴う電子励起過程が及ぼす影響を解明することを目的として研究を進めている.平成24年度に得られた主な研究成果は以下の通りである. (1) プラズマ照射誘起欠陥導入・拡散のメカニズムを解明するために,前年度に引き続き,プラズマ装置内でイン・プロセスに紫外光を付加的に照射する実験を行った.特に,付加光の照射のタイミングを,プラズマ照射の初期段階から終盤段階,そしてプラズマ照射終了後と変えて行った実験結果から,紫外光は,欠陥の導入過程ではなく,内部に導入された欠陥の拡散速度の増大を引き起こしていることを明らかにした. (2) 前年度に引き続き,プラズマ照射誘起欠陥を含むショットキー障壁ダイオードを用いて,バイアスを印加することで欠陥の荷電状態をコントロールした上でアニール実験を行った.その結果をシミュレーションと比較することによって,ドーパントの不活性化を引き起こしている欠陥のアニール挙動は,その荷電状態に大きく依存するネガティブU型または両極性欠陥である可能性を明らかにした. (3) プラズマとして,HeからKrまでの質量の異なる4種類の不活性ガスを用いて欠陥導入の比較を行った.その結果,表面付近で最初に導入される欠陥は,原子衝突によって窒素原子が変位することに伴う真性点欠陥であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
付加光を同時照射したプラズマ照射実験が順調に進んだこと,欠陥のアニール挙動について実験とシミュレーションとの比較検討ができたこと,さらに質量の異なる不活性ガスを用いた実験結果などを総合して,プラズマ照射欠陥の起源の絞り込みができたことによる.
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今後の研究の推進方策 |
ドーパントの不活性化の原因となっている欠陥種の同定に繋げていくために,ショトキーバリア・ダイオードを用いた測定では評価ができない極表面の欠陥について,高速電子移動度トランジスタ(HEMT)構造を用いた実験を展開する.また,プラズマ照射誘起欠陥の拡散が紫外光照射によって増速される機構について,再結合促進欠陥運動(反応)との関係を明らかにするために,関連する深い準位の性質を明らかにしていく.イン・プロセスでの光照射の実験を引き続き系統的に進め,欠陥の発生・拡散を抑制できるプラズマ装置の設計指針の構築に繋げていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として50万円を充てる計画である.主として,GaN基板結晶およびAlGaN/GaNエピタキシャル結晶と電極用金属材料を購入する.30万円は,研究成果発表のための旅費および論文投稿料に充てる予定でいる.
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