研究課題/領域番号 |
23560012
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
河村 裕一 大阪府立大学, 地域連携研究機構, 教授 (80275289)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 量子井戸 / InGaAsN / GaAsSb / InAsSbN / 赤外デバイス |
研究概要 |
本年度は波長3μm帯の赤外デバイスを実現するための基礎となる実験としてMBE法により結晶を作製し、(1)InGaAsNの特性評価、(2)InAsSbN単一量子井戸の特性評価、(3)InGaAs/GaAsSbの特性評価、(4)InGaAsN/AlAsSb共鳴トンネル素子の試作を主に行った。(1)に関しては光吸収スペクトルと電気的特性のN濃度依存性について調べた。その結果、N濃度2.5%を境に特性が大きく変化していることが明らかとなった。(2)については成長温度480℃の量子井戸と成長温度450℃の量子井戸の光学的特性を比較した。その結果成長温度450℃の場合の方が成長温度480℃の場合に比較して発光波長が長くなるとともに、発光強度も若干増加し半値幅も約10meV程度小さくなることが明らかとなった。これは450℃で成長した方が結晶性が良くなることを示している。長波長化のメカニズムは今の所明らかとなっていない。この結果については学会で報告を行った。(3)についてはInGaAs層とGaAsSb層の切り替え時における成長中断の効果を調べた。その結果、成長中断を入れることによりドナーの関与した発光が無くなること、および中断を入れることによりN型からP型に変化することが明らかとなった。これは今後inGaAsN/GaAsSb量子井戸を作製する上で重要な情報を与えるものである。この結果についても学会で報告を行った。(4)についてはInGaAsN層の品質を調べる意味でAlAsSbバリア層を用いることによりInGaAsN/AlAsSb共鳴トンネル素子の試作を行った。その結果、室温で明瞭な負性抵抗を観測することが出来た。この結果はInGaAsN層とAlAsSb層の界面が良好であることを示している。この結果については学会発表と論文の投稿を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
InGaAsN層の品質が保たれるN濃度の限界を把握出来た。また成長中断効果が及ぼす影響が明らかになった。これによりInGaAsN/GaAsSbタイプII量子井戸構造の成長条件がかなり明確になったといえる。またInAsSbN量子井戸の成長温度依存性の実験から成長温度の最適化が必要であることが明らかとなりInAsN/InAsSb量子井戸の成長条件をある程度明確化することも出来た。またInGaAsN/AlAsSb共鳴トンネル素子において室温で負性抵抗が観測されたことはNを含む量子井戸の界面が良好であることを示しており、光学的品質を向上できる可能性を示すことも出来たと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
H24年度の結果に基づき、以下の内容の研究を進める予定である。(1)InGaAsN層については2.5%以上での特性の大きな変化の原因を解明するため、X線回折装置による結晶構造のN濃度依存性を調べる。構造の変化と光学的特性および電気的特性の関係を明らかにする。(2)InGaAsN/GaAsSb量子井戸に関しては、発光強度の強い結晶を作製するための最適成長条件を明らかにする。これにより波長3μm帯の赤外デバイスとして応用可能であることを明確にする。(3)InAsN/InAsSb量子井戸に関してはInAsSbN層で得られた結果をもとにしてGaSb基板上での成長を検討する。特に光学的特性の成長温度依存性を明確にし、さらに特性の温度依存性を低温から室温の領域におきて明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の研究費の使用計画は以下の通りである。(1)光学測定装置に対する備品費として700000円を予定している。(2)結晶成長のための材料費、薬品費、基板材料費などとして900000円を予定している。(3)出張費として300000円を予定している。
|