研究課題/領域番号 |
23560014
|
研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
小澤 哲夫 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (90247578)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | GaN / InGaN / 液相成長 / 窒素プラズマ / 窒化物半導体 / 低温低圧成長 |
研究概要 |
(1)水素―窒素混合プラズマ密度の制御によるGaN液相成長におけるGa-NHx中間体の効率的な生成条件の解明を目的として、プラズマ溶液成長装置内の坩堝上部に配置させたラングミュアプローブにより水素―窒素混合プラズマ密度を測定し、マイクロ波パワーとガス量比により制御を行った。GaN成長を一時中断し成長融液内のN濃度をEPMAを用いて定量分析することで成長融液内N濃度分布の結果から混合プラズマ密度との相関関係を見出した。(2)熱流体数値解析による自然対流の攪拌効果の解明を目的として、三次元総合熱流体解析を用いて、多段ヒーターの配置、設定温度、坩堝形状の最適化から自然対流の原料輸送に関する条件を見出した。解析モデルは、マイクロヒーター(10mm×10mm)による加熱システムを坩堝上部側面4枚、坩堝下部側面4枚、坩堝底4枚に配置し、融液表面の初期Ga-NHx中間体濃度は上述より測定した濃度分布を使用する。マイクロヒーターの温度設定は、底部ヒーターを基準温度とし、上部と下部の温度を独立に変化させる。ヒーター温度は非定常的に台形波的に振動させ、自然対流による攪拌効果の最適化を行う。続いて、Ga-NHx中間体の拡散方程式、熱伝導方程式、流体運動方程式を連結して非定常解析を行い、温度分布、Ga-NHx中間体濃度、基板方向へのフラックス速度から最大成長速度の解析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した層に導入には後れを取ったが、(1)水素―窒素混合プラズマ密度の制御によるGaN液相成長におけるGa-NHx中間体の効率的な生成条件の解明において、プラズマ溶液成長装置内の坩堝上部に配置させたラングミュアプローブにより水素―窒素混合プラズマ密度を測定し、マイクロ波パワーとプラズマ密度の関係を見出すことができた。GaN成長を一時中断し成長融液内のN濃度をEPMAを用いて、二次元的に解析することに成功した。成長融液内N濃度分布の結果から混合プラズマ密度との相関関係を見出し、Ga-NHx中間体の生成条件の最適化の指針を得た。(2)熱流体数値解析による自然対流の攪拌効果の解明においては、数値解析には、市販の三次元総合熱流体解析を用いて、多段ヒーターの配置、設定温度、坩堝形状の最適化から自然対流の攪拌制御を行う指針を見出した。(3)5ゾーン坩堝加熱システムの構築においては、数値解析で得られた最適化条件を基に坩堝加熱システムを作成するために、計5つの独立した温度調節コントローラーで温度制御を行う方式を考案した。具体的には、上下部それぞれの対面するマイクロヒーターを1つの温度調節コントローラーで制御し、底部の4つのマイクロヒーターは1つの温度調節コントローラーで制御する。坩堝内部の温度が収束せず発散する問題が考えられるが、Ga融液は低プランドル数流体のため熱伝導が速く、非定常的な温度変化による制御系の発散はないと考えられる。 以上の結果から、平成23年度は当初の計画通りに進んだものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
数値解析で得られた最大成長速度の最適化条件を基に坩堝加熱システムを作成する。坩堝加熱システムは、計5つの独立した温度調節コントローラーで温度制御を行う。具体的には、上下部それぞれの対面するマイクロヒーターを1つの温度調節コントローラーで制御し、底部の4つのマイクロヒーターは1つの温度調節コントローラーで制御する。坩堝内部の温度が収束せず発散する問題が考えられるが、Ga融液は低プランドル数流体のため熱伝導が速く、非定常的な温度変化による制御系の発散はないと考えられる。上述の内容を踏まえて、 (1)水素―窒素混合プラズマ密度制御によるGa-NHx中間体の効率的な生成機構の解明、(2) Ga-NHx中間体の対流輸送機構の開発によるGaN成長速度の高速化と高品質化、(3)InxGa1-xN三元混晶バルク成長への応用を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)混合プラズマ密度制御と対流攪拌効果を用いたGa-NHX中間体輸送促進によるGaN結晶成長作成した5ゾーン坩堝加熱システムを用いてサファイア基板上へGaN単結晶成長を行う。成長条件は平成23年度の三次元総合熱対流解析解析で得られた結果とラングミュアプローブを用いてマイクロ波パワーと混合ガス量比で制御したプラズマ制御システムを付加して行う。プラズマ制御システムの育成に関するパラメータは、データーロガーに収納し、育成試料の結晶評価データーとの依存性の解明を行う。数値解析で生ずる温度誤差は、実験パラメーター値を変化することで適時対応する。(2)育成結晶の分析と5ゾーン坩堝加熱システムの再点検成長したGaN結晶の断面をSEM観察し、成長速度を求める。またPL測定、AFMを用いて結晶性を評価する。得られた一連の解析結果をまとめ、5ゾーン坩堝加熱システムの再点検を行う。予測された結果が得られない場合は、成長速度と温度設定条件を見直し、再度三次元総合熱対流解析を行う。現行の成長速度を100倍以上増加させることを念頭に5ゾーン坩堝加熱システムの改良を行う。(3)三元混晶InGaNのバルク成長水素―窒素混合プラズマ制御による液相成長法に5ゾーン坩堝加熱システムを加えた方法を用いて三元混晶InGaNのバルク成長を行う。三元混晶InxGa1-xNでは坩堝内にIn-Ga溶液を入れ、溶液の組成比率、設定温度、水素―窒素混合プラズマ密度を成長パラメーターとして、混晶比の変化に及ぼすパラメーターを抽出する。当面は混晶比制御を念頭に置き、その後バルク単結晶育成を試みる。以上の成果を国内学会、国際会議、ホームページ等で公開する。
|