研究課題/領域番号 |
23560015
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
竹内 哲也 名城大学, 理工学部, 准教授 (10583817)
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キーワード | トンネル接合 / 窒化物半導体 / メモリー効果 |
研究概要 |
本年度は全体研究計画(3年)の二年目にあたり、計画通り(2)極薄膜形成技術と(3)新規トンネル接合を進める一方、最終目標である(5)新規素子への応用に向けた埋め込み型トンネル接合も前倒しで進めた。以下、この三点について記載する。 (2)極薄膜形成技術: 薄膜としてGaInNに関して進めた。15nmと厚い膜から3nmと薄くし、かつ高いInNモル分率(0.2)を使用することで、表面状態が良好(表面粗さ0.5nm以下)で、かつ電圧降下の低いトンネル素子(20mA駆動時0.8V)を実現した。この値は世界的に見ても最も低い値のひとつである。さらに、このGaInN薄膜を使用することでMgメモリー効果が大幅に抑えられ、電圧降下を達成した理由のひとつであることも明らかにした。 (3)新規トンネル接合: 昨年に引き続き、順方向の電流電圧特性が検討できる構造を検討した。GaInNを使用することで電圧降下が低減することを見出した。本結果でも、界面準位形成が重要であることを示唆しており、界面準位を意図的に形成する手法としてZnドープを提案、その準備(装置改造)を進めた。 (5)新規素子への応用: 本年度は、三つの新規素子にトンネル接合を適用した。まず、上記順方向が検討できるトンネル接合上にLEDを形成する逆構造を検討した。この構造では、白色LED電球の課題である効率ドループ(高電流注入時の効率低下)を解決できる可能性がある。現段階では、均一に発光する素子を実現した。次に、トンネル接合を用いたマトリックス駆動アレイを作製した。トンネル接合利用によりアレイ作製工程数を半減することができ、高い歩留りで微小LED(10umφ)を高密度(250um角に100個)に配置したアレイを実現した。さらに、新しい電流狭窄構造として、昨年度見出した側面からの新規p型層活性化手法を積極的に利用した電流狭窄構造を特許出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トンネル接合における極薄膜形成技術においてGaInNに絞ったことで、その良好な特性およびその理由の明確化の双方を達成することができ、達成度は100%である。一方、新規トンネル接合は、界面準位に関する検討としては準備のみに終わってしまい、達成度は50%である。前倒しで進めた新規素子への応用では、逆構造素子の実現、アレイ素子への適用、さらには昨年度見出した新規活性化手法に基づいた新規電流狭窄構造の提案と、複数の新規素子において想定以上の成果を生み出すことができた。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、(3)新規トンネル接合と(5)新規素子への応用に注力し、新規トンネル接合の適用により、これまでに実現していない新規素子の実現を目論む。具体的には、Znドープ界面準位形成による新規トンネル接合を検討し、さらなる低抵抗化を実現する。一方で、トンネル接合による電流狭窄構造を、提案した新規手法と従来の埋め込み手法の双方を行うことで最適な構造を実現し、面発光レーザ構造等へ適用することで電圧降下や電流拡散を検討する。さらにトンネル接合による大規模マイクロLEDアレイの作製や逆構造LEDによる効率ドループの改善などの検討も継続し、様々な観点からトンネル接合の優位性を実証することで、申請当初に期待したワイドギャップ半導体素子における電流注入構造の新機軸として確立させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記推進方策に基づき、結晶成長、素子形成、素子特性評価の各段階において以下の研究費使用を計画している。本年度は、最終年度であることから、最終段階の素子特性評価が研究活動の中心になると計画している。 【結晶成長】サファイア基板×50:20万円、石英部品 30万円 【素子形成】マスク×2: 30万円 【素子特性評価】光学部品:50万円
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