研究課題
本年度は、全体研究計画の最終年度であった。これまでの成果を基に、①トンネル接合のさらなる低抵抗化と、②新規素子へのトンネル接合の適用を進めた。①の低抵抗化として、トンネル接合内のp型GaInN層のInNモル分率を0.4まで増大させた結果、以下の成果を得た。まず、20mA時0.1V以下の電圧降下を実現。これまでよりも一桁小さい値であり、TLM法により、トンネル接合の接触比抵抗を正確に見積もった結果、3e-2Ωcm2を得た。続いて、トンネル接合を有する微小LEDより、高電流密度(3kA/cm2)におけるトンネル接合の接触比抵抗は少なくとも2e-3Ωcm2以下であった。最後に、InNモル分率増大により、Mg偏析が減少、急峻な不純物プロファイルが得られ、その結果、上記低抵抗トンネル接合が実現したと考えられる。以上示した抵抗値は、大量生産に向くMOCVD法により得られた値として、これまでの報告値の中で最も低い値である。②の新素子への適用として、以下の成果を得た。まず、トンネル接合により積層させたタンデム型太陽電池を作製し、従来よりも高い開放短電圧を得た。次に、埋め込みトンネル接合による電流狭窄発光素子を作製し、10μm径でリーク電流がなく発光する微小LEDを実現した。さらに、トンネル接合による逆構造LEDを形成し、上記Mg偏析の抑制手法を用いることで、従来構造LEDと同等以上の発光強度を得た。上記の素子はいずれも低抵抗トンネル接合なしには実現できない新規素子であり、本研究により初めて実現された。以上述べたように、本研究では、当初の目的通りに低抵抗トンネル接合を実現し、そのトンネル接合を適用した新規素子を実現した。今後は、各新規素子において個別に要求される特性を有するトンネル接合を検討することで、新規素子の特性がさらに向上し、実用化に繋がることが期待される。
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Japanese Journal of Applied Physics
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