研究課題/領域番号 |
23560016
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
若松 孝 茨城工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 准教授 (80220838)
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研究分担者 |
豊島 晋 福島工業高等専門学校, 電気工学科, 助教 (70515840)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 微小光共振器 / 微小光学 / エバネッセント光 / 金属増強エバネッセント光 / 全反射減衰法 / 蛍光スペクトル / 有機薄膜 / クエンチング |
研究概要 |
次の2つの項目に関して実施した。なお、分担者は、作製薄膜の評価の一部と微小光共振器の製作を行った。(1)金属微小光共振器の部材作製・評価 金属/色素分子/ギャップ層(~μm)/金属構造の微小光共振器を構築するために必要な薄膜部材を作製し、それらの吸収、蛍光、及び全反射減衰(ATR)の光学特性を測定・評価した。真空蒸着法により、蛍光性材料のルブレンとアルミニウムキノリノール錯体(Alq3)の薄膜を作製した。色素薄膜の吸収スペクトル、金属増強エバネッセント光の励起条件(入射角、励起光波長)、及び蛍光特性(蛍光スペクトル、放射角度依存性、励起条件)等を調べ、金属微小光共振器における増強エバネッセント光学モードの励起と放射光発生の条件を探る上で必要な基礎データを得た。ルブレン薄膜の光励起には、青色レーザ光よりも、蛍光クエンチングが低減される緑色レーザ光が適すること、一方、Alq3薄膜では、青色レーザ光が適することが分かった。(2) 微小光共振器・放射光計測システムの構成 微小光共振器・放射光計測システムのプロトタイプを設計・製作した。このシステムは、入射光源・光導入部、入射角調整部、微小光共振器、放射光計測部から構成される。光源には、LD励起緑色レーザを用い、空間フィルター、偏光素子、及び光量調整フィルターにより微小光共振器へ入射するレーザ光ビームを調整した。回転ステージ上に45°直角プリズム/金属薄膜(Ag)/色素薄膜の試料を設置し、細い金属ロッドの先端(鏡面研磨済)上に蒸着コートした金属(Ag)を対向金属に用いた。粗動用ステージとピエゾ駆動の高精度ステージで金属ロッド先端部分を薄膜試料に微小接近させ、金属微小共振器を構成した。放射光計測部は、集光用レンズ付きの光ファイバーで放射光を分光器に導入し、高感度検出器で分光計測する。製作した実験システムの各部の基本操作を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属微小光共振器の薄膜部材の作製と評価は、概ね計画通りに進められた。微小光共振器における空気ギャップ層のナノスケール制御までは到達していないが、実験システムの製作も概ね順調に遂行された。なお、東日本大震災によって多くの実験機器が損傷し、機器の修理や代替品の調達のために、本格的な研究の再開には約半年を要し、研究の実施に大きな影響を及ぼした。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度と同様に継続して、金属微小光共振器の薄膜部材の作製・評価を行う。また、増強エバネッセント光共振モードの発生実験を行う上で、色素分子の適応性評価と選択は、未だ十分ではないので、平成23年度に研究調査した以外の材料についても検討する。 また、平成23年度の研究で見出された、実験システム(プロトタイプ)における課題を解決する。増強エバネッセント光学モードの励起に用いるプリズムの形状を変更して、レーザ光干渉法で金属微小光共振器のギャップ層の距離や対向金属間の平行度を測定・評価する。 上記課題を解決した段階で、増強エバネッセント光学モードの発生実験と放射光の計測を行う。薄膜部材の基礎データや金属微小共振器の反射率測定、及び特性の理論計算を基に実験システムの調整を行い、微小光共振器内の色素分子を光励起し、共振器ギャップ層からの放射光特性を測定・調査する。なお、研究分担者は、主に作製薄膜部材の評価、及び増強エバネッセント光学モードの発生実験と放射光計測を担当する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度と同様に継続して、材料(色素分子、金属)や薬品等を購入し、金属微小光共振器を構成する各種薄膜部材を作製・評価する。また、金属微小光共振器に使用する対向金属ロッドやホルダー等を作製する。さらに、低パワー小型レーザ光源、台形プリズム、ハーフミラー等の光学部品を購入し、光干渉法により微小光共振器における空気ギャップ層の測定・制御を行う。
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