研究課題/領域番号 |
23560016
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
若松 孝 茨城工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 准教授 (80220838)
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研究分担者 |
豊島 晋 福島工業高等専門学校, 電気工学科, 助教 (70515840)
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キーワード | 微小光学 / 微小光共振器 / エバネッセント光 / 全反射減衰(ATR)法 / 有機薄膜 / 空気ギャップ / 光干渉法 / 蛍光スペクトル |
研究概要 |
(1)金属微小共振器の部材作製と評価 前年度と同様、継続してプリズム/金属/色素分子層/空気ギャップ層(~μm)/金属構造の微小共振器を構築するために必要な薄膜部材を作製し、作製薄膜の吸収、蛍光及び全反射減衰(ATR)特性の測定・評価を行った。色素分子には、緑色レーザ(λ=543nm)による金属増強エバネッセント光の励起で蛍光消光が低減できるルブレン色素を、金属には銀を用いた。 (2)金属微小共振器のギャップ層の評価と制御 金属増強エバネッセント光共振器の動作で最も重要となる、金属間の空気ギャップ層の微小距離(数μm以下)を計測・評価した。前年度使用していたプリズム結合器を、45°直角プリズムから台形プリズムに変更し、レーザ光干渉法により空気ギャップ層の微小距離を計測できるように改良した。台形プリズムの上部平坦面からレーザ光を金属薄膜を通じてギャップ層へ垂直に入射させ、台形プリズム底面部と対向金属の各境界面からの反射光による光干渉により、ギャップ層が計測・評価可能かどうかを調べた。金属薄膜による照射光の減衰により、光干渉のSN比が小さく、さらに高い出力の照射光が必要であることが分かった。一方、微小共振器の空気ギャップ層へ側面からレーザ光を照射し、ギャップ層の透過光による光干渉を用いたところ、ギャップ層間の微小距離が計測・評価できることが分かった。なお、これらの計測には、小型半導体レーザ(λ=635nm,4.5mW)を使用した。一軸ピエゾステージで対向する金属ロッドを変調移動させ、空気ギャップ層の距離変調を光干渉で高感度に検出した。また、金属間の静電容量と接触抵抗の測定も併せて行った。その結果、構築したプリズム結合器/金属/色素分子層/空気ギャップ層/金属構造の金属微小共振器における空気ギャップ層の計測評価には、ギャップ層の透過光による光干渉が有効であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ギャップ層の透過光による光干渉計測、及び金属間の静電容量と導電率測定から、金属増強エバネッセント光共振器の動作で最も重要な金属間の空気ギャップ層の計測・制御が、十分に可能であることを確認した。しかしながら、当初の到達目的である、金属光共振器で増強エバネッセント光モードの放射光が、未だ観測されてはいない。また、増強エバネッセント光の励起に適する色素分子の検討が、未だ数種類(ローダミン系色素、ルブレン色素)に限定しており、これまでに、適性のあるルブレン色素分子のみを研究対象としている。さらに、増強エバネッセント光モードを励起するために、色素分子の検討対象を広げる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次のように研究を進める計画である。 (1)ルブレン色素以外の蛍光色素材料の適正について検討を行う。未だ調査していない他のローダミン系色素分子を薄膜化し、光吸収や蛍光特性を調べて、それらの適性を検討する。 (2)光干渉法による空気ギャップ層の計測から、ギャップ層の極微小振動が検出されているため、実験システムの微小振動対策を行い、ギャップ層間距離の制御精度を向上させる。 (3)これまでの実験から、増強エバネッセント光の放射光発生の抑制要因として、対向金属ロッドの先端面の平坦度と平行度が考えられる。その対策として、ロッド先端部の平坦精度を向上させる。具体的には、対向金属に金属膜コートした微小半球レンズを使用し、球面の微小な平坦面を活用する。 なお、研究分担者が、平成25年度より明石工業高等専門学校へ異動となるため、研究計画の一部を変更する。具体的には、研究分担者が主に担当していた、光共振器の薄膜部材の作製・評価、微小光共振器の実験的評価、放射光の測定等の実験に関してすべてを研究代表者が行い、併せて研究成果の発表も研究代表者が行う。そのため、先に実験を進めて、計画していた光共振器の理論解析は、増強エバネッセント光による放射光の測定に成功し、適切な実験条件が判明した後に実施するように研究計画を変更する。
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次年度の研究費の使用計画 |
薄膜材料(色素分子、金属)、ガラス基板材料及び薬品等を購入し、微小共振器を構成する薄膜部材を作製し、光学的評価を行う。また、金属ロッド先端の平坦精度を向上させるために、高性能の研磨剤等を購入し、微小共振器を作製する。さらに、微小半球レンズを購入して、金属微小共振器への適応性を検討する。 これまでの研究成果を国際会議等(KJF International Conference on Organic Materials for Electronics and Photonics 2013, 18th Microoptics Conference)で発表し、学術論文誌に投稿する予定である。また、応用物理学会や電子情報通信学会等の関連学会や国際シンポジウムに参加し、研究遂行に役立つ情報や関連する最新の研究動向を調査する。
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