光触媒は日本の研究が先進し、水や空気清浄化技術等で利用され人工光合成への期待もされるクリーン技術である。現状ではその可視光応答が課題となっている。一方、鉄(Fe)とシリコン(Si)で構成される鉄シリサイド半導体(β-FeSi2)は、良質な薄膜成長技術の飛躍的進展により、光半導体としての基礎物性の理解と発光・受光素子用の応用への研究がこの10年来わが国を中心に進められている半導体である。 本研究は鉄シリサイド半導体の禁制帯幅が0.80eVと狭いこと、光吸収係数が1eVで10E+5 /cmと大きいことに着目し金(Au)を助触媒として担持した光化学ダイオードを作製し、可視光応答可能な光触媒の実現を目指して可視光応答への可能性を調査した。 その結果、シリコン上の鉄シリサイド結晶内部の欠陥密度を飛躍的に低下させ、光励起キャリアの拡散長よりも小さな微細粒結晶の合成を実現した。その際、電子顕微鏡による粒径評価、フォトルミネッセンス発光特性による欠陥密度の評価結果をフィードバックさせることで、合成条件の最適化を行った。さらにシリコン粉末表面に鉄シリサイド微粒子を合成した試料の光触媒特性を評価した結果、可視光照射下における水の半分解に起因した水素生成が確認され、この半導体の光触媒特性が確認された。
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