軽量、低コストの点から次世代のデバイスとして有機デバイスが注目されている。より高いキャリア移動度を有する有機FETの開発が求められている。典型的な有機半導体であるPentaceneのようなπ系有機分子は,π軌道の重なりがキャリア移動度に影響を与える。そのため高いキャリア移動度を得るには、Pentaceneの分子配向を制御する必要がある。昨年までの研究で銅を蒸着した溝構造を持つ基板上に、Pentaceneを蒸着すると、①Pentaceneは面内異方性配向を示す。②溝の間隔を狭めることで、Pentacene膜の異方性が高まること見出した。。本年度はではより高い面内異方性を得るために,よく規定された溝構造を持ち,溝間隔100nmと非常に狭いナノ構造溝構造をもつSi(SiO2)を基板とし,その上にPentacene,およびpolytetrafluoroethylene (PTFE) ,Pentacenenを蒸着した膜を作製した。これらの試料の角度分解紫外光電子スペクトル(ARUPS)およびSEMを測定し,基板の溝構造と膜作成機構およびPentacene分子の分子配向の関係を明らかにすることを目的とした。 Pentacene (65nm)/PTFE のARUPSスペクトルにおいて PentaceneのHOMO は,溝方向と入射光の電場ベクトルが平行(平行配置)では観測されるが、垂直(垂直配置)では観測されない。さらにPentacene/PTFEのSEM像からPentaceneは溝の内部で優先的に成長していることがわかった。溝構造により,膜成長に位置選択性があることを見出した。 Pentacene (15nm)/SiのARUPSスペクトルのPentaceneのHOMOから放出光電子はPentacene/PTFEの場合と異なり、垂直配置でもHOMOのピークが現れている。このことはPTFE層を間に挟むことにより、pentaceneが異なる膜成長をしていることを示している。さらに放出光電子強度が平行配置と垂直配置で異なることから、Pentacene/Siにおいて面内異方性配向をしていることがわかった。
|