研究課題/領域番号 |
23560020
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 巌 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00343103)
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研究分担者 |
山本 達 東京大学, 物性研究所, 助教 (50554705)
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キーワード | 酸化物半導体 / キャリアダイナミクス / 時間分解光電子分光 / 半導体表面 |
研究概要 |
酸化物半導体表面/界面に光を照射すると起電力が発生し、ある緩和時間を経て元の平衡状態へと戻る。本研究では時間分解光電子分光システムを構築し、この一連の電子状態変化をリアルタイムで追跡することで太陽電池や光触媒反応などを支配するキャリアのダイナミクスを調べる。 昨年度までに本グループにおいてフェムト秒パルスレーザーと高輝度放射光を組み合わせた時間分解光電子分光システムがSPring-8 BL07LSUにおいて完成し、目標の装置性能での安定かつ再現性の良い時分割測定が可能となった。本年度は光触媒材料として重要なストロンチウムチタン酸化物(SrTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)といった酸化物結晶の表面について、その光起電力効果の緩和過程における一連の時間分解光電子分光実験を行った。各系の時間変化を捉えることに成功し、さらに入射光の強度や時間に対して各表面系は複雑な電子状態変化をすることを観測した。そこでその解釈を正しく行うために、代表的な半導体のモデル系であるシリコンの表面での時間分解光電子分光実験も行った。シリコン表面上への金属吸着によって表面の電子構造を系統的に制御し、そしてその緩和過程を追跡した結果、機構メカニズムの全貌が明らかとなった。シリコン表面についての研究成果は、論文にまとめられ現在国際ジャーナルに投稿中である。また酸化物表面におけるキャリアダイナミクスについては、シリコン表面の結果から構築した機構モデルを元にその解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
代表的な酸化物であるSrTiO3だけでなくTiO2やZnOなどの結晶表面の時間分解光電子分光測定に成功した。また代表的な半導体であるシリコンでの実験も実施でき、キャリアダイナミクスのモデル構築も着々と進んでいるから。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は順調に進んでいる。 今後も予定通り行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画も予定通り遂行され、酸化物表面に対する時間分解データを着々と収集している。一方で、本プロジェクトを通じて、この複雑な表面系におけるキャリアダイナミクスを満足に説明するモデルが現代科学では不足していることを痛感した。そこで次年度は国内外の動的現象を専門とする理論家や時間分解光電子分光の実験家と綿密な議論を行い、今後の太陽電池や光触媒の材料設計に役立つキャリアダイナミクスモデルを本プロジェクトの成果として構築する。研究費はどの議論をするための旅費、そして立証実験のための装置改造に使用する予定である。
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