研究課題
ストロンチウムチタン酸化物(SrTiO3), 酸化亜鉛(ZnO), 酸化チタン(TiO2)などの酸化物半導体結晶は相関電子系の物性物理研究として注目されるだけでなく光触媒反応を起こすものもあり、化学の分野においてもこれまでその研究が精力的に行われ、近年では環境及びエネルギー問題解決の糸口とされている。光触媒反応は固体表面で化学反応が進行するため、光照射で結晶内部に発生した電子とホールの輸送及び寿命は化学反応効率を決める大事な要因である。このように酸化物半導体表面近傍のキャリア移動の研究は最近特に重要性を増してきているが、その電子特性及び光照射に伴う表面キャリアの動的過程はほとんど何も分かっていなかった。本研究では物質の電子状態と化学状態を直接観測することができる光電子分光の時間分解実験を元に、太陽電池や光触媒反応などを支配する光励起キャリアのダイナミクスを調べてきた。実験は主にSPring-8放射光施設ビームラインBL07LSUにて実施された。フェムト秒パルス赤外~可視光線レーザーと高輝度軟X線放射光を組み合わせたポンプ-プローブ法により、ピコ秒~マイクロ秒時間分解光電子分光実験が行われ、これまでSrTiO3, ZnO, TiO2の各電子状態の光励起後の動的変化をリアルタイムで追跡することに成功した。これら酸化物表面におけるキャリアの時間変化は複雑であり、その正しい理解のために代表的な半導体であるシリコン(Si)結晶の表面を理想系としてそのダイナミクスも調べた。そして後者の研究を通じてキャリアの動的モデルが構築され、それを元に酸化物半導体表面の動的過程の具体的な解析が可能となった。そしてそれぞれの酸化物r表面のキャリアダイナミクスが明らかとなり、特にTiO2表面については光触媒反応活性と直接関わると考えられる光励起キャリアの寿命を具体的に知る事ができた。
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