研究課題
水中レーザー誘起ブレークダウン分光法(水中LIBS)で先鋭な原子発光線スペクトルが得られる機構を明らかにするため、キャビテーションバブル(気泡)とプラズマの関係に着目した。まず、パルスレーザー照射に対する気泡生成のタイミングを精密に測定する方法を確立した。パルス幅が150 nsのロングパルスを用いた場合、パルスの立ち上がりの早い時点で気泡の発生が見られた。これは照射中に気泡が存在し、レーザーのエネルギーが直接気泡に与えられることを示している。これに対して、パルス幅が20 nsの場合、パルス照射中は明確な気泡が見られず、表面付近に強い発光がみられた。この部分は後に膨張するが、そのときにはパルスはすでに終わっているため、気泡にレーザーのエネルギーが直接与えられることがない。ロングパルスが明瞭な発光スペクトルを与える理由は、主として気泡生成後の比較的希薄なプラズマにレーザーのエネルギーが与えられるためであるとの示唆を得た。気泡の膨張にともない気泡中のプラズマも膨張するが、膨張後のプラズマの周縁部分のみのスペクトルを空間分解的に測定すると、プラズマ生成初期に見られる強い連続スペクトルや大きく広がった線スペクトルは見られず、先鋭な原子発光線スペクトルのみが得られることを見いだした。強い連続スペクトルを与える生成初期のプラズマのサイズは非常に小さいため、膨張後のプラズマの周縁部に対応する位置のみの観測により、時間ゲート測定することなく生成初期の強い連続スペクトルを回避し、先鋭な原子発光線スペクトルのみが得られることを実証した。研究期間を通して、ダブルパルスおよびロングパルス照射にもとづく水中LIBSで、時間ゲート測定することなく先鋭な原子発光線スペクトルを得る方法を確立した。また、気泡やプラズマの生成・膨張と照射のタイミングとの関係によって、現象が説明されることを明らかにした。
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Applied Physics A
巻: vol.112, No. 1 ページ: 209-213
10.1007/s00339-012-7291-x
Applied Physics Express
巻: 6 ページ: 082401
10.7567/APEX.6.082401