超高圧電子顕微鏡トモグラフィーは医学・生物学系試料の3次元構造を観察することに有用である。その際、電子顕微鏡像の撮影には試料傾斜角を少しずつ変えた像を数十枚から百数十枚もの画像を取得する必要があり、撮影プロセスの自動化が求められている。試料の傾斜にともない観察視野やフォーカスがずれるので1枚撮影ごとにそれらの微調整が必要である。本研究ではオートフォーカスを高速化することを進めてきた。フォーカスの合い具合を画像鮮鋭度という評価値を与えると、生物系の試料においては画像のフォーカス具合を数値化できる。ビデオレートでの像取得が可能なハイビジョンビデオカメラを用いた画像から画像鮮鋭度を求めオートフォーカスに用いることにした。ハイビジョンカメラ像はスロースキャンCCDカメラに比べると解像度が4分の1と低く、ノイズが多いという欠点があるが、20枚程度積算すること画像鮮鋭度を評価するに十分なS/Nが得られることが分かった。5種類のデフォーカス像から画像鮮鋭度を計算し、それが最大となるフォーカス値を擬似ガウス関数とのフィッティングで求める手法を開発し、最適フォーカス値を決定することができた。超高圧電子顕微鏡の動作を外部プログラムから、フォーカス値である対物レンズの電流値、試料傾斜角度、視野の位置などを制御し、オートフォーカスおよび視野位置補正を行いながら、電子線トモグラフィーの傾斜像シリーズの自動撮影の大幅な高速化を実現した。実際に4000×4000ピクセルのCCD画像を2度おきのトモグラフィー傾斜像シリーズを取り込むのに30分で完了する。これは従来の半分の時間ですむことから3次元構造観察の大幅な効率化を達成した。
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