ヘリウムイオンをアルカリ蒸気に入射させることでヘリウムイオンから準安定ヘリウム原子への電荷交換を発生させる。このためアルカリ金属蒸気室を伴う電荷交換室を設計製作した。アルカリ蒸気を安定させて発生させるために、ヒーター温度を調整できる仕様にした。またアルカリ蒸気が分析室に流入するのを防ぐためにビーム出口を冷却する機構を加えた。このため冷却水循環機構を伴う構造となった。さらに減速レンズを用いてヘリウムイオンを減速させる機構をアルカリ蒸気と同電位にする機構にした。減速させた状態で電荷交換を発生させる必要があるからである。排気系にはターボ分子ポンプを用いた。真空排気した状態で、アルカリ蒸気室のるつぼの温度、蒸気室出口の温度が、それぞれ設定した温度に調整できることを確認できた。今後は減速レンズをこの電荷交換室に組込み、実際にアルカリ金属蒸気を用いた準安定原子生成実験を行う予定である。 電子放出材料表面の電子状態抽出実験の試料として、鉄/シリコン表面、ダイヤモンド表面およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜表面をX線光電子分光法、オージェ電子分光法、紫外光電子分光法、そしてラマン散乱法の各手法を用いて測定した。速度可変型準安定原子源の動作が確認できしだい、水素終端ダイヤモンド表面の電子状態を調べる予定である。またアルカリ金属吸着表面などの低仕事関数表面について、準安定原子の脱励起過程について調べる予定である。
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