研究課題/領域番号 |
23560031
|
研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
竹口 雅樹 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (30354327)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 電子線ホログラフィー / 試料走査 / Li電池 |
研究概要 |
走査位相計測電子顕微鏡法を実現するため、実験装置のセットアップとして、XYZ走査型試料ステージと回転可能な電子線バイプリズムを200kV電界放射型透過型電子顕微鏡に取り付けた。当初はSTEMシグナル検出器とその前面における可動入射絞りの組み合わせによって特ある任意の点の位相情報を像として出力する予定であったが、検討の結果、2048×2048ピクセルの高感度CCDカメラを用いて、バイプリズムを用いて形成された干渉縞の強度を記録する方式にすることとした。真空中を通過した電子と試料を通過した電子をバイプリズムによって重ね合わせることで、干渉縞に沿った1次元強度分布はその垂直方向への試料走査と連動させることで高速に2次元位相マップとなる。すなわち各走査位置でのある1つの縞を通過する試料の位相情報を得ることができた。また位相像表示ソフトを研究協力者の三石和貴博士と開発し、1次元試料走査によって2次元位相像出力することができた。本成果の一部は現在特許申請中であり、また論文準備中である。試料に関しては、今年度、その場観察試料ホルダーを購入し、ガスを流しながら試料観察ができるようにした。特に大気によって酸化しやすい試料では不活性ガスや窒素ガスを流しながら保持できるので有効である。また電極が設けてあるのでチャージ・ディスチャージしながらのポテンシャル変化を計測できるようになっている。今年度はその動作確認までを実施した。試料作製はFIBを用いて行ったが、FIB装置からこの試料ホルダーに移す際の大気暴露を防ぐためのグローブバックを今後は用意する方針である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置のセットアップは予定通り完了し、また実際に試料走査による位相像取得もできるようになった。また当初はH24年度に実施計画していたAuやMgOナノ粒子を用いたデータ取得と性能評価についてもH23年度中にそれらのデータの取得まで達成し、これに関しては予定を上回る進捗であるといえる。一方試料準備に関しては試料の形状の工夫や電極取付についてはかなり確立できており、大気暴露を最小限にする搬送法もできつつある。所望の試料を用いて電圧をかけるテストを再現性よく行うためにはもう少し工夫が必要であり、この部分は予定から1-2か月遅れ程度になっている。手法開発と試料作製は、手法開発がやや先行して進んでおり、全体的には概ね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、位相分解能や位置分解能、倍率可変性、ホログラムのフレネルフリンジ変調の影響などについて性能評価と理論的検証を行う。また位相定量計測についても検討を行い、ソフトウエア上の改造だけではなく実験条件や理論的検証による最適化を行う。そして位相計測の分解能やそれ以外の様々な情報抽出において計測精度を向上させるためのパラメータを検討し、微小なポテンシャル変動などについてより詳細に解析ができるようにし、走査位相計測電子顕微鏡法の確立を図る。試料に関してはLi二次電池材料におけるチャージ・ディスチャージ繰り返しをしながら電解質/電極界面におけるポテンシャLiリチウムの組成分布の確認として電子線エネルギー損失分光(EELS)によるリチウム分布のマッピングも行う計画である。さらにLi二次電池だけではなく様々な電池材料や触媒材料などの環境エネルギー材料その場計測への応用も実施したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用を計画している研究費は、試料素材費、バイプリズム交換消耗品費、試料作製関連消耗品のみである。試料素材費はテスト用二次電池電極/電解質材料を素材作製メーカーへ依頼するか、NIMS内の別の研究グループと協力して材料購入して製作するかを検討しており、いずれにしてもその素材費は必要である。バイプリズムのワイヤ電極は使用につれて汚れてくるので次年度早々に交換を予定している。また試料作製関連消耗品はFIB加工の前の切断や研磨のための刃や研磨シート、試料保持のメッシュなどである。
|