研究課題/領域番号 |
23560036
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
勝山 俊夫 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90467134)
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研究分担者 |
和田 恭雄 東洋大学, 学際融合研究科, 教授 (50386736)
青木 画奈 独立行政法人理化学研究所, メタマテリアル研究室, 研究員 (90332254)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | シリコンフォトニクス / アモルファス・シリコン / シリコン細線導波路 / フォトニック結晶 |
研究概要 |
本年度は、大面積化と多層積層化が可能な、シリコンをベースとする光回路(シリコンフォトニクス)の新規な作製方法を検討するため、アモルファス・シリコン(a-Si)を用いて以下の検討を行った。(1) 中空a-Si膜の歪低減と平坦化検討:スパッタリング法で作製したa-Si膜(厚さ:0.2μm)のたわみ量が、スパッタ時のウエハ基板温度とアニール温度によってどのように変化するかを詳細に検討した。その結果、スパッタによってストレスが生じることを確認するとともに、スパッタ温度が室温、150℃、300℃と変化してもストレス量はほぼ一定であることを明らかにした。また、ストレスはアニールによって低減し、その低減量は、アニール温度を600℃、1000℃と変えても変化しないことを明らかにした。(2) a-Siの光学特性の評価:a-SiからなるSi細線導波路を作製し、その光伝搬損失のアニール温度依存性を詳細に検討した。その結果、Si細線導波路の導波路幅と光損失の関係をアニールの前後で比較し、導波路の光モードプロファイルに基づく考察から、アニールによってa-Si自体から生じる光損失が増加し、導波路表面の凹凸による光損失が減少することを定量的に明らかにすることができた。この結果は、a-Siを用いたフォトニック結晶や細線導波路の低損失化の基礎となる知見を与えるものである。(3) a-Siスラブ構造の大面積化評価:項番(1)で示したストレスとアニールの関係の検討結果を基に、当研究グループで今までに報告した面積の4倍となる20μm角の大面積エア・ブリッジ型スラブ構造を、a-Si膜を用いて実現することができ、a-Si膜を用いたエア・ブリッジ型スラブ構造フォトニック結晶の高機能化に途を拓いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 中空a-Si膜の歪低減と平坦化検討において、当初計画で予定した通り、歪低減に目途を付けることができた。(2) a-Siの光学特性の評価では、a-SiからなるSi細線導波路のアニールによる損失要因の解明により、a-Siを用いたフォトニック結晶や細線導波路の低損失化の基礎となる知見を得ることができた。また、(3) a-Siスラブ構造の大面積化評価においては、20μm角のa-Siからなるエア・ブリッジ型スラブ構造を実現することができ、a-Siからなる大面積フォトニック結晶の実現に途を拓いた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に行った基礎検討を基に、以下の検討を進める。(1) a-Siスラブ構造の大面積化評価:平成23年度に引き続き、歪の少ないa-Si膜を用いて、エア・ブリッジ型を含む様々なスラブ構造フォトニック結晶を作製する。とくに、光入出力部としてのSi細線導波路を有する2次元スラブ構造のフォトニック結晶を作製し、その特性を定量的に評価する。(2) a-Si膜からスラブ構造の積層化検討:a-Siからなるスラブ構造の特長を最大限活かす構造は、積層化した立体光回路である。従来の貼り合わせ法等に比べて、作製方法が極めて単純化する。その作製プロセスは以下のとおりである。まず、Si基板にSiO2とa-Siをスパッタ法で積層堆積する。このとき、a-Si層に歪が残らない最適条件でa-Si層を形成する。次に、電子線描画装置とICPエッチング装置を用いて、a-Si層にSi細線導波路のパターンを作製する。さらに、パターンを形成したa-Si上に、再度スパッタリングでSiO2層とa-Si層を形成する。このとき、スパッタ条件の最適化により、堆積されたSiO2層の表面が平坦になるようにする。今度は、a-Si層に別のパターン、たとえばグレーティングのパターンを形成し、積層化した立体光回路の基本構造を作製する。また、SiO2層全体を除くことによって、エア・ブリッジ型の積層構造実現のための基礎的な検討を進める。 次いで、平成25年度は、a-Si膜からなる立体スラブ構造光回路を実際に作製し、その基本特性を評価することによって、a-Siからなる立体スラブ構造からなる光回路の有効性を確認する。ここで、立体スラブ構造とは、パターンが異なるスラブ構造を積層方向に多数積み上げる構造とする。同時に、スラブ構造の一部にフォトニック結晶のような周期構造を導入することによって、新規な機能の創出を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
a-Siスラブ構造、およびそれを積層化した立体光回路の作製のために、Si基板、a-Si作製のためのスパッタ用Siターゲット材料等の材料費、およびパターンニングのためのマスク一式を購入するための費用が必要である。この他、作製した素子の光学特性を評価するため、光学部品、電子部品、光学ステージ等の部品購入のための費用が必要となる。 また、成果発表のための、学会出張費、共同研究者との打合せのための出張旅費が必要であり、研究成果を学術雑誌に掲載するための投稿料が必要となる。
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