研究課題/領域番号 |
23560036
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
勝山 俊夫 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90467134)
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研究分担者 |
和田 恭雄 東洋大学, その他の研究科, 教授 (50386736)
青木 画奈 神戸大学, 工学研究科, 助教 (90332254)
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キーワード | シリコンフォトニクス / アモルファス・シリコン / Si細線導波路 / フォトニック結晶 |
研究概要 |
本年度は、平成24年度に行った基礎検討を基に、以下の検討を進めた。 (1)立体スラブ構造光回路の作製検討:アモルファスSi(a-Si)からなる細線導波路の上にSiO2層を介して、同じくa-Siからなるグレーティング層を形成し、2層構造の立体光回路を実際に作製した。作製は以下の手順で行った。 まず、a-Si薄膜(0.2μm)とSiO2膜(1.0μm)がSi基板上に積層している三層構造の特殊なSOI (Silicon On Insulator) 基板を用いた。次に、電子ビームリソグラフィの際の位置合わせの基準となるマーカーを、金を用いたリフトオフにより作製する。金を用いる理由は、電子線照射時の二次電子を観察し位置合わせを行うためである。SOI基板にレジスト塗布後、電子ビームリソグラフィとドライエッチングにより細線導波路を形成した。次に、細線導波路の上にSOG (Spin on Glass) を塗布し、その上にa-Si層を作製したSOGを介することで、下の導波路の凹凸の影響を受けずに上のa-Si膜が作製できる。この積層膜を用いて、位置合わせ電子線描画を行い、グレーティング形状を作製して、2層構造の立体光回路を実際に作製することができた。 (2)立体スラブ構造光回路の特性解析:上記(1)で検討した結果をもとに、光入出力のための細線導波路の最適化を行い、実際にレーザ光を入射して、その特性を実験的に評価した。特に、出射光の波長依存性と偏光依存性を詳しく調べ、シミュレーションとの比較により、設計したものが実際にできているかを評価した。これらの検討により、出射光の波長依存性と偏光依存性の測定結果では、シミュレーション結果とほぼ同一の結果が得られた。このことから、設計どおりの細線導波路とグレーティング層からなる2層構造の立体光回路を実際に作製することができ、立体光回路という概念を検証することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)立体スラブ構造光回路の作製検討において、アモルファスSi(a-Si)からなる細線導波路の上にSiO2層を介して、同じくa-Siからなるグレーティング層を形成し、2層構造の立体光回路を実際に作製することができた。このような構造を作製できたのは、(i) 金マーカーによる精密な位置あわせ描画が出来たこと、(ii) SOGを用いることによって、凹凸のある第1層の上に平坦なa-Si層を再度積層出来たこと、の2点を鍵技術としてあげることが出来る。このように、立体スラブ構造光回路の作製は、ほぼ予定通り順調に達成できたと考えられる。 一方、(2)立体スラブ構造光回路の特性解析に関しては、細線導波路とグレーティング層からなる2層構造の立体光回路へ実際にレーザ光を入射して、その特性を実験的に評価し、シミュレーションとの比較により、設計したものが実際にできていることを検証することが出来た。これらの検討により、立体光回路という概念を検証することが出来たが、2層構造の立体光回路の光学測定において、細線導波路への光入射は非常に難しいことが判明した。このように、現実に光回路を使用するときに問題となる点が明らかになったので、最終的な目標達成度は、やや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に行った検討を基に、期間を延長して以下の検討を進める。 (1)立体スラブ構造光回路の作製検討:平成25年度に行った検討では、細線導波路とグレーティング層からなる2層構造の立体光回路の光学測定において、細線導波路への光入射は非常に難しいことが判明した。このように、現実に光回路を使用するときに問題となる点が明らかになったので、平成26年度はこの改善を行い、かつ国際会議においてその結果を発表する。 このため、細線導波路の代わりに、発光層を立体光回路に組み込み、回路自体が発光することによって光強度を大きくし、光学測定を容易にする。また、このことは、実際の立体回路使用に当たって、容易に光の入出力を可能にすることを意味する。具体的な発光層として、Si系の材料であるベータFeSi2を用い、その発光層の構造最適化を行い、立体光構造を作製する。 (2)立体スラブ構造光回路の特性解析:上記(1)の検討で作製するベータFeSi2層を第1層として組み込んだ立体光回路の光学測定を行い、その構造が実際に出来ていることを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度は、平成25年度に行った検討を基に、期間を延長して検討を進めるため、次年度使用額が生じた。具体的には、(1)立体スラブ構造光回路の作製検討を行う。ここでは、細線導波路とグレーティング層からなる2層構造の立体光回路の光学測定において、細線導波路への光入射が非常に難しいことが判明したため、次年度はこの改善を行い、かつ国際会議においてその結果を発表する。このため、細線導波路の代わりに、Si系の材料であるベータFeSi2を用いて、発光層を組み込んだ立体スラブ構造光回路を作製する。 また、(2)上記(1)の検討で作製するベータFeSi2層を第1層として組み込んだ立体光回路の光学測定を行い、その構造が実際に出来ていることを検証する。 ベータFeSi2層を第1層として組み込んだ立体光回路の作製のために、Si基板、ベータFeSi2薄膜を作製するための材料等の材料費が必要である。また、最終的な成果発表のための、学会出張費、共同研究者との打合せのための出張旅費が必要であり、研究成果を学術雑誌に掲載するための投稿料が必要となる。
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