研究課題
紫外発光素子の蛍光体に用いるため、パルスレーザー堆積法を用いてフッ化マグネシウム基板上にネオジウムイオンを添加したフッ化ランタン(Nd3+:LaF3)薄膜を作製し、これらの薄膜から、真空紫外領域である173nmをピークとする発光スペクトルを観測した。さらに成膜時の基板温度を制御することにより、発光効率の改善に成功した。基板温度は、400度までは高温にするほど発光効率は上昇し、600度では減衰が見られた。この最も効率のよい基板温度400度で成膜した薄膜からの蛍光寿命をF2レーザーと真空紫外ストリークカメラを用いて測定を行った結果、蛍光寿命は7.8ナノ秒であった。これは、チョクラルスキー法によって作製した単結晶材料から得られる蛍光寿命に極めて近い値であり、真空紫外領域での蛍光体として十分に高品質な薄膜が得られていると考えられる。この薄膜を蛍光体として用いることにより、より発光効率の高い素子が期待できる。また、このNd3+:LaF3と同様に、真空紫外発光材料であるNd:LiLuF4やKMgF3に対しても成膜条件の最適化を行うことにより、発光効率の改善が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
申請時の平成23年度の目的は、紫外発光材料であるフッ化物の薄膜化技術を確立することであった。この目的を達成するため、パルスレーザー堆積法を用いてNd3+:LaF3薄膜の作製を行い、これらの薄膜から、真空紫外領域である173nmをピークとする発光スペクトルを観測した。通常薄膜作製において雰囲気制御は重要な要素であるが、有害なフッ素ガスを用いなくてはならないフッ化物材料においてこの雰囲気制御は困難である。そのため、ターゲットと作製した薄膜の組成ずれの少ないパルスレーザー堆積法を用いたことで、真空中で作製した薄膜からでも、発光中心であるネオジウムイオンの機能する発光材料として高品質な薄膜が得られた。さらに成膜時の基板温度を制御することにより、発光効率の改善にも成功している。この最も高品質な薄膜に対して行なった、F2レーザーと真空紫外ストリークカメラを用いた時間分解分光評価により、チョクラルスキー法によって作製した単結晶材料から得られる蛍光寿命に極めて近い値を得ており、真空紫外領域での蛍光体として単結晶と同等の品質であると考えられる。 以上のことから、本研究は概ね順調に進んでいると考えられる。
本研究の目的は、低消費電力、薄型大面積の安定で長寿命な真空紫外発光素子を開発することである。平成23年度は、発光素子に必要な蛍光体の薄膜化を行なった。平成24年度からは、発光素子及び評価装置の作製、電界放出素子(電子線発生部)開発を開始し、引き続き紫外発光材料の薄膜(発光部)開発を継続する。 評価装置作製のために、真空チャンバー内に作製した発光素子を保持するテフロン製のホルダを備え、素子からの発光はMgF2窓を通して外部に取り出す構造の装置を設計している。光学特性評価は分光器や光検出器を用いて行う。電界放出素子については、イオンビームをグラファイト基板に照射し、針状ナノ構造及びカーボンナノファイバを作製し、発光素子に最適な密度制御を行う。発光材料の薄膜化については、Nd3+:LaF3と同様に、真空紫外発光材料であるNd:LiLuF4やKMgF3についても、主にパルスレーザー堆積法を用いた薄膜化を行い、成膜条件の最適化を行うことにより、発光効率の改善を行う。
本研究においては、申請書にも記述したように、研究を進める上で必要となる大型の設備に関しては、極力、申請者の所属機関や全国共同利用研究所の共同利用機器を利用する。そこで設備備品に関しては、共同利用機器を使用できないものに限って購入する予定である。 物品費に関しては、次年度も継続して薄膜化技術開発を行うため、材料や基板を購入する。また、評価装置作製のために、真空部品や光学部品を消耗品として購入する。さらに、設備備品として、評価装置のための定電圧電源を購入する。 次年度も、学会での発表に加え論文雑誌への投稿を計画している。そのため、旅費及び投稿費にも研究費を使用する予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)
Jpn. J. Appl. Phys.
巻: 51 ページ: 022603-022603-3
10.7567