研究課題
X線原子散乱因子のデータベースを基礎に、世界最短波長のアト秒領域軟X線多層膜光学素子構造であるZnO/TiO2多層膜構造の設計を行った。特にTiを使う理由は、軟X線領域における異常分散を利用することで、高反射率を期待できるためである。軟X線多層膜光学素子の性能をシミュレーションできるソフトウェアおよびデータベースは研究室で独自に構築し、同ソフトウェアおよびデータベースを駆使して、さらに最適なZnO/TiO2多層膜構造の設計を行った。 酸化物の原子層成長を実現できる軟X線多層膜光学素子構造作製装置を利用して、ZnO膜およびTiO2膜を同一基板(サファイヤC面)、同一基板温度(450℃)で作製できる条件を見いだし、ZnO/TiO2超格子多層膜構造の原子層成長を実現した。作製したZnO/TiO2多層膜構造の構造評価は、表面は原子間力顕微鏡、積層については断面透過型電子顕微鏡により、また多層膜の周期構造やヘテロエピタキシャル成長についてはX線回折装置を用いて行った。軟X線領域では多層膜界面のラフネスによる散乱損失により、軟X反射率の低下が著しく、積層欠陥の抑制方法を研究することで、欠陥の少ないZnO/TiO2多層膜構造の開発し、軟X線散乱損失の低減を図る必要があった。 作製したZnO/TiO2超格子多層膜構造の軟X線反射率の測定は分子科学研究所のUVSORで行い、波長2.74nmの「水の窓」域軟X線に対して、僅か10周期で、29.4%の極めて高い反射率を得た。
2: おおむね順調に進展している
軟X線領域では多層膜界面のラフネスによる散乱損失により、軟X反射率の低下が著しくなる問題点があった。しかし積層欠陥の抑制方法を研究することで、欠陥の少ないZnO/TiO2多層膜構造の開発し、軟X線散乱損失の低減に結果的に成功しているため。
今後は、平成23年度に得られた結果を考慮して、その上で、より広いX線波長領域で有効な複数の吸収端を有する膜構造の反射率シミュレーションを行い、広帯域軟X線に対する複数層膜構造の設計を行う。その設計に従って、実際に複数の吸収端を有する膜構造を積み重ねて、酸化物複数層膜構造の原子層成長を行なう。申請者が現在施設利用している分子科学研究所UVSORの機器較正用ビームラインのUL5Bを利用して、アト秒領域複数層膜用酸化物構造の軟X線光学性能評価を行う。軟X線光学性能評価結果とシミュレーション結果を比較して、複数層膜構造の積層を改善し、広帯域な高反射率特性にフィードバックしていく。
アト秒光源は、可視近赤外域のチタンサファイヤレーザーをベースにしているので、その基本波光源の分離が必要である。そのためのレーザーミラー、多層膜基板など消耗品を購入する。また得られている成果を発表するための学会費、交通費に使用する。
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Materials Science and Engineering
巻: Vol.24, No.012021 ページ: 1-8
巻: 24 ページ: 012022-1, 9
Journal of Crystal Growth
巻: 314 ページ: 146, 150