研究課題/領域番号 |
23560041
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
熊谷 寛 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (00211889)
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キーワード | アト秒ミラー |
研究概要 |
平成23年度に得られた結果を基にして、平成24年度はより広いX線波長領域で有効なZnO/TiO2多層膜構造の反射率シミュレーションを行い、広帯域軟X線に対する多層膜構造の設計を行った。特にTiを使う理由は、軟X線領域における異常分散を利用することで、高反射率を期待できるためである。軟X線多層膜光学素子の性能をシミュレーションできるソフトウェアおよびデータベースは研究室で独自に構築し、同ソフトウェアおよびデータベースを駆使して、さらに最適なZnO/TiO2多層膜構造の設計を行った。その設計に従って、実際に厚さの異なるブロックを積み重ねて、ZnO/TiO2多層膜構造の原子層成長を行った。酸化物の原子層成長を実現できる軟X線多層膜光学素子構造作製装置を利用して、ZnO膜およびTiO2膜を同一基板(サファイヤC面)、同一基板温度(450℃)で作製できる条件を見いだし、ZnO/TiO2超格子多層膜構造の原子層成長を実現した。その多層膜構造を分子科学研究所UVSORの機器較正用ビームラインのUL5Bを施設利用して、軟X線光学性能評価を行ったところ、平成24年度の計画していた以上の高性能な多層膜構造が作製できていることが判明した。総じて、(1)より広いX線波長領域で有効な多層膜構造の反射率シミュレーション、(2)広帯域軟X線に対する多層膜構造の設計、(3)その設計通りに厚さの異なるブロックを積み重ねる、酸化物複数層膜構造の原子層成長の実施、(4)広いX線波長領域で有効な多層膜構造の実証に成功した。さらに付加的な成果であるが、新たな多層膜材料の組み合わせであるV2O3/TiO2超格子多層膜構造が、広帯域軟X線に対する多層膜構造になりうることを、反射率シミュレーションから導きだすことにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ZnO/TiO2超格子多層膜構造から発展して、近接するTiとVの2つの吸収端を利用できる、新しい、V2O3/TiO2超格子多層膜構造を見いだし、その可能性について、反射率シミュレーション解析により、有用であることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
より広いX線波長領域で有効なV2O3/TiO2超格子多層膜構造が大いに期待できる。 近接するTiとVの2つの吸収端を利用できるためである。 V2O3薄膜の原子層成長に関して、サファイヤ基板、ルチル基板での結晶成長性等について検討を行い、V2O3/TiO2超格子多層膜構造の作製方法について検討し、V2O3/TiO2超格子多層膜構造の有用性の展望を見いだす。
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次年度の研究費の使用計画 |
V2O3薄膜の原子層成長研究に関わる、基板材料、光学材料などの消耗品購入に主としてあてる。 次年度は最終年になるので、得られた結果を取りまとめ、成果の発表、公表にも、研究費を利用する。
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