本課題では、研究代表者が独自に開発してきた酸化物軟X線光学素子の原子層成長技術を基盤に、ZnO/TiO2酸化物超格子多層膜ミラーを作製し、ZnO/TiO2酸化物超格子構造が広い周波数帯域を提供する「水の窓」軟X線領域において高反射率でかつ多重周期により軟X線周波数を精密に位相制御できることを世界に先駆けて実証し、最終的にはアト秒光学素子としての構造的な性能評価を行うことを目的とした。 研究実施にあたっては、研究実施計画通り、まず、X線原子散乱因子のデータベースを基礎に、軟X線多層膜光学素子の性能を詳細にシミュレーションできる、研究室で独自に構築したコードおよびデータベースを駆使して、アト秒領域の広帯域なZnO/TiO2超格子多層膜構造を明らかにした。次に、軟X線多層膜光学素子構造作製装置を構築し、ZnO膜、TiO2膜と同一基板(サファイヤC面)、同一基板温度(450℃)で、ZnO/TiO2超格子多層膜構造の原子層成長を実証した。さらに、反射率シミュレーションで得られた広帯域なZnO/TiO2超格子多層膜構造の設計パラメータに従って、実際に周期長の異なるブロックを積み重ねて、広帯域な多重周期ZnO/TiO2超格子多層膜構造を作製した。最後に、研究代表者が分子科学研究所UVSORの機器較正用ビームラインのBL5Bを利用して、アト秒領域軟X線多層膜光学素子構造の軟X線光学性能評価を行った。
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