研究課題/領域番号 |
23560049
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
伊藤 民武 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (00351742)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 表面増強ラマン散乱 / 表面増強蛍光 / 電磁場増強因子 / 蛍光消光増強因子 / 強結合系 |
研究概要 |
本研究では強結合系の実証のために表面増強ラマン散乱(SERS)と表面増強蛍光(SEF)の不安定性を定量解析しました。 SERSとは、金や銀ナノ粒子2量体の接点においてプラズモン共鳴場と分子分極が相互作用した結果、ラマン散乱強度が最大で10^14倍ほど増大する現象です。この相互作用の結果、蛍光も増大します。この蛍光をSEFと言います。SEF強度は分子と金属表面間の距離に鋭敏に依存し消光因子も増強されます。SERSはSEFと比べるとこの距離依存性は鈍感です。従って、SERSとSEFを比較することでそれらの不安定性を距離の関数として解析できます。実験から見積もった電磁場増強因子|M_EM|と蛍光消光増強因子|M_d|^2を示します。|M_d|^2が|M_EM|より二桁ほど大きいことから分子と金属表面間の距離が数オングストロームであることが分かりました。SERS増強因子とプラズモン共鳴のピーク波長を比較した結果、SERS増強因子のスペクトル不安定性はプラズモン共鳴によって引き起こされることが分かりました。定量化した強度揺らぎと|M_d|^2を比較した結果、SERSとSEFの不安定さは数オングストロームの分子の位置揺らぎであることが分かりました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強結合の証明に不可なパラメーターである電磁場増強因子と蛍光消光増強因子を実験的に見積もることに成功した。この成果は強結合の定量的証明に重要である。
|
今後の研究の推進方策 |
強結合系の特徴である高振動準位からの蛍光の観測を行う。その結果を用い系の位相緩和以内にエネルギーのやり取りを行っているか検証する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
プラズモン共鳴スペクトルは表面増強蛍光スペクトルに変調を与えるため強結合系の特徴である高振動準位からの蛍光の特定を困難にする。次年度ではこの問題を解決し定量的に表面増強蛍光を評価し強結合系の証明に繋げる。
|