研究課題/領域番号 |
23560050
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
望月 博孝 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (60392669)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ポリマークラッドファイバー / チオフェン/フェニレンコオリゴマー / 蒸着膜 / 熱処理 / 光増幅 |
研究概要 |
既存のポリマークラッドファイバー(PCF)のクラッドに朱色蛍光色素(4-(Dicyanomethylene)-2-methyl-6-(4-dimethylaminostyryl)-4H-pyran、DCM)を浸透させ、ドープしたPCFでの信号光の増幅現象を確認するために、震災で影響が出た増幅光学系の再立ち上げを行った。またφ~300μmのシリカコアにフッ素系ポリマーを被覆して独自のPCFを作製し、蒸気輸送法によってレーザー色素を浸透させるドープドクラッドファイバーの作製も目的としており、屈折率が1.41のフッ素化メタクリル樹脂をシリカコアの外周部に被覆した。それに様々な蛍光色素が浸透するか評価した結果、DCMを浸透できることがわかった。チオフェン/フェニレンオリゴマー(TPCO)の結晶が、疑似連続光で励起しても発光能の劣化がないことが見出されている。これらの材料は今までのレーザー色素が抱えていた濃度消光という問題がない上、耐久性もあるため、有機色素が成し得なかった連続光励起による信号光増幅への期待がもてる。TPCOを基板上に製膜した後、熱処理によって多結晶化させるプロセスが最も効率よく基板上に結晶を作製できることから、TPCOを光増幅材料として用いて前述のプロセスが増幅器の作製プロセスとして有望か検討する必要がある。そこでTPCO蒸着膜の熱処理による結晶化の最適条件を探索した結果、2,5-bis(4-biphenylyl)thiophene (BP1T) と1,4-bis(5-phenylthiophen-2-yl)benzene (AC5)の場合、それぞれ190℃、165℃が処理時間と得られるドメインサイズから最適であることを見いだした。また得られた結晶膜は既に報告されている単結晶と同様なXRDプロファイルを示し、効率よく基板上に単結晶ライクな膜が形成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は震災により組み立て済みであった光学系の再構築など振り出しに戻る作業が必要となった。しかし、より早い復旧が可能であった蒸着機を用いて、濃度消光が発生せず耐久性があるTPCO結晶の基板上への作製条件の最適化を行った。TPCOは増幅材料として有望のみならず、デバイスの生産性を下げない材料であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
クラッドの活性物質を導入した光増幅器でのコア及びクラッドの屈折率の最適化を計算し、実際の素子化に展開する。また耐久性があり濃度消光が生じないTPCO結晶の効率よい作製方法の検討を行いデバイス作製工程に反映する。
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次年度の研究費の使用計画 |
TPCO他、高い発光能を有する有機化合物や錯体などの光増幅器の作製のために必要な材料費、及びその他測定に伴い機器の消耗品などを年度を通じて使用する予定である。また今年度の冬に国際学会と国内学会の参加を予定している。
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