研究課題/領域番号 |
23560052
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 之博 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00281791)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | フォノニック結晶 / 音響波 / 導波路モード / バンドギャップ |
研究概要 |
高効率くさび形導波路の設計の柱となるのが、3次元フォノニック結晶において大きなバンドギャップを得ることと、厚さが先端からの距離の冪関数で変化するくさび型音響導波路にどのような導波路モードが励起可能かを調べることである。本年度は、3次元フォノニック結晶としてオパールを想定し、音響波に対するバンド計算を行い、バンドギャップが大きくなるように物質パラメータの最適化を行った。オパールは球状の二酸化シリコンが最密構造(面心立方格子)をとるように積み重なって形成される物質であり、3次元フォノニック結晶を構成する。バンドギャップの大きさを決定するパラメータは、二酸化シリコン球同士の接触具合(焼結パラメータと呼ぶ)であり、これを連続的に変化させることによって、バンドギャップの大きさを計算した。得られた結果は、焼結パラメータが小さければ第一バンドギャップは単調に大きくなり、完全バンドギャップを形成することを見出した。また、六方最密構造をとった場合の計算も行ったが、これも同様に、焼結パラメータを小さくすることによって、単調に大きくなるバンドギャップを得ることに成功した。また、厚さが先端からの距離の冪関数で変化するくさび型の導波路における局在モードの固有振動数の計算も行った。以前、他の研究グループで扱われたTimoshenkoモデルを用いた近似を使用せず、時間領域有限差分法(FDTD法)を用いることによって、より正確な方程式を数値的に解き、局在モードの固有振動数を見い出した。その局在モードの固有振動数は、くさびの先端の厚さに大きく依存することを示した。加えて、3次元フォノニック結晶の代わりに、2次元フォノニック結晶を使用できるかどうかの検討を行うために、2次元フォノニック結晶層に局在するフォノンモードおよびバンド計算も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年は北海道大学に設置してあるスーパーコンピュータが新システム導入のために、10月まで使用不可能だったので、大規模な数値計算を必要とする音響波に対する3次元フォノニック結晶のバンド計算の進捗に遅れが生じた。それを補うために、当初の計画では1台購入する予定のワークステーションを、2台分増設して購入した(大型計算機使用料をワークテーション購入費に充てた)。それらを使用して、2次元フォノニック結晶および3次元フォノニック結晶のバンド計算を行った。また、次年度に主として行う予定だった、厚さが先端からの距離の冪関数で変化するくさび型音響導波路における局在モードの固有振動数の計算を行い、本年度の遅れを取り戻した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の続きとして、3次元フォノニック結晶における音響波バンド計算を、さらに良い精度で実行する。前年度は、オパールと物質を限定して解析を行ったが、ここでは、さらに、物質、構造や充填率(3次元フォノニック結晶では、球の体積と結晶の単位胞の体積との比)を変えて、フォノン周波数ギャップの最大になるパラメータを探索する。また、前年の結果を踏まえて、無フォノン環境を形成する3次元フォノニック結晶を基盤とした高性能くさび型導波路の設計を試みる。設計にあたり重要な点は、(A)くさび型導波路をどのように基盤に取り付けるか、(B)くさび型導波路とフォノニック結晶との間に緩衝層は必要か、必要だとすれば、何を入れるべきか、(C)くさび型導波路の大きさとフォノニック結晶の周期の関係はどうすべきかの3つの項目があげられる。特に、(C)は重要な要素で、くさび型導波路の形状と、フォノニック結晶の周期長(周波数ギャップの位置)との関係を見いだす必要がある。したがって、その関係を見いだし、最も高性能なくさび型導波路を与えるパラメータの最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の繰り越し金146,320円のうち、すでに約70,000円は3月に大阪で開催された日本物理学会の旅費として使用されている。残りの76,320円は、次年度に米国で開催されるフォノン国際会議で使用するモバイルパソコンを購入する予定である。次年度の研究の主な使用計画は、米国で開催されるフォノン国際会議の参加料および旅費(約400,000円)、北海道大学に設置されている大型計算機使用料(約550,000円)である。
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