| 研究課題/領域番号 |
23560054
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| 研究機関 | 静岡大学 |
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研究代表者 |
近藤 淳 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (10293606)
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| 研究分担者 |
横嶋 哲 静岡大学, 工学部, 助教 (80432194)
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| 研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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| キーワード | 弾性表面波 / マイクロリアクタ / 音響流 / ストリーミング力 / 液滴搬送 |
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| 研究概要 |
弾性表面波と液滴の相互作用について，光学的手法と温度分布計測により検討を行った．温度分布計測では，熱電対温度計を数μLの液滴内にいれて分布の観察を試みた．しかし，音響流が熱電対により乱される．このため，同時多点温度計測は難しい．そこで，非接触温度計による測定を試みた．所有している非接触温度計の最小スポット径はおおよそ100μｍでる．また，非接触温度計で測定できるのは液滴表面の温度であり，内部の温度分布は分からない．このため，液滴内部の温度分布の詳細を知ることができなかった．非接触でかつ内部温度分布を調べるには，新しい計測法を確立しなければならない． 光学的手法を用いた観測では，購入した動き解析マイクロスコープにより液滴観察を行った．本マイクロスコープを用いることにより，2000fpsでの観察が行えるようになった．従来，弾性表面波による液滴搬送は，液滴内部に働くストリーミング力により接触角が変化し，その結果として弾性表面波進行方向に液体が運ばれると考えていた．しかし，観察結果は液滴搬送はそのような単純ではないことを明確にした．また，トレーサ粒子（岩絵の具）を用いて液滴内部の音響流可視化を行った．得られた結果より，液滴が動くと音響流の振る舞いも複雑になることを明らかにした． 観察と同時に液滴搬送のモデルについても検討を行った．搬送は接触角の変化に基づくと考え，液滴が斜面を滑落するときに必要な力とストリーミング力の比較を行った．その結果，後者の方が大きいことが分かった．すなわち，液滴搬送には，液滴滑落に必要な力以上の力が必要であることを明らかにした． 観察結果結果より，液滴搬送及び液滴内部の音響流は非常に複雑であることが分かった．そこで，シミュレーションのためのモデル化は，圧電結晶表面を伝わる弾性表面波から液滴が放射するということから出発すべきであるという結論になった．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液滴という微少量内部の音響流に伴う温度分布を測定は，熱電対や非接触温度計など既存の装置では困難であることを明確にした．すなわち，外部から内部温度分布を知るには新しい方法を構築することを意味しており，今後の検討課題とする． 光学的手法による観察において，液滴搬送の詳細を明らかにすることができた．特に液滴搬送の詳細観察は，搬送メカニズム解明につながる貴重なデータである．しかし，この結果は計画書作成時に推測していた液滴搬送は接触角の変化によって生じるというような単純なモデルでは表現できないことも示している．液滴内部の音響流の振る舞いも複雑であり，とくに液滴が搬送さると固液界面の形状が変わるため，静止時とは全く異なることが明らかになった．これらは，本研究により購入したマイクロスコープによる観察により初めて明確になった事柄である．これらの観察結果を踏まえ，液滴搬送までのモデル化を行うのではなく，モデル化は半無限液体中への縦波放射から検討すべきであるという結論になった． 以上より，当初の計画に対して，問題が複雑であることは明らかになったけれども，計画としてはおおむね順調に進展していると判断した．
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| 今後の研究の推進方策 |
液滴搬送のメカニズムがこれまで考えてきた以上に複雑であることが明らかになった．そこで，今後は以下の2点にターゲットを絞り，研究を進める．（１）マイクロスコープによる詳細な観察弾性表面波の周波数，振幅，液滴量，接触角を変えることにより，液体がどのように搬送されるかを詳細に観察する．同時に，トレーサ粒子を用いてそれぞれの状態における音響流の可視化を行う．可視化により，液体内で生じている弾性表面波により発生する音響流の流れの詳細を理解する．（２）数値解析のためのモデル化と解析液滴の形状変形がこれまで考えていた以上に複雑であることが分かった．そこで，初めに弾性表面波から液体中に縦波が放射されるモデルを考える．最初の段階では，液体は半無限と仮定し，液滴の壁のような境界を考えない．このモデルによる解析が行えたら境界を考慮する．境界条件は完全反射で行う．最後に，境界で液滴表面への表面波励振を考慮した検討を行う．
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| 次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度では，圧電結晶表面に生じる波によって生じる流れをシミュレーションするため，COMSOLマルチフィジックススを購入する．本ソフトにより，圧電結晶上を伝わる波動により生じる液体中の流れ解析を行う．
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