研究課題/領域番号 |
23560057
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
磯村 雅夫 東海大学, 工学部, 教授 (70365998)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマ / ゲルマニウム / スパッター / 熱光発電 |
研究概要 |
本研究ではRFプラズマプロセス装置のカソード電極にDC電源をRF遮断フィルターを介してRF電源と並列に接続し、負のDCバイアス電圧をカソードに印加することで、電子密度を低下させることなく基板に対するプラズマ電位を低下させ、高品質半導体膜を作製することを目指している。 負のカソードバイアスの効果を確認するため、当大学で開発した新エミッシブプローブ法によって電子温度、プラズマ電位の測定をお試みた。その結果、DCバイアスを-250~-320[V]と印加させたとき、DCバイアスの低下とともにプラズマ電位が単調に減少することを確認した。通常、プラズマ電位はガス種、圧力、電子温度等で決まる値であり、単純に低下させるのは難しいと思われていたが、本方法により効果的にプラズマ電位が低下することが今回初めて判明した。これはプラズマCVDや本件で用いているスパッター法により作製する試料へのイオンダメージを低減できる可能性を示唆するものであり、カソードへの負DCバイアス印加は高品質半導体膜の作製法として期待できることが確認できた。 本方法が製膜試料に与える効果について検討するため、既に光電変換材料として実績のある微結晶シリコンの反応性スパッター法による製膜に適用し、半導体として最も重要な特性の一つである光電変換特性に改善がみられた。光電変換特性は半導体中の欠陥生成によって低下することが知られており、本方法によるイオンダメージの低減が効果的に欠陥生成を抑えたことが分かる。 これらの結果は本方法が半導体薄膜作製に対し本計画で期待する効果を持つことを証明するものであり、目標達成の見込みが得られたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった負のカソードDCバイアスによるプラズマ電位の低減に成功しており、微結晶シリコンの成膜において本方法が特性改善に効果があることを合わせて示すことができた。また、24年度から検討を開始する欠陥処理についても、23年度中に計画通り装置の設計と組み立てが終了し、すでに検討を開始している。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はカソードDCバイアスを用い反応性スパッター法で結晶ゲルマニウム薄膜の作製を試みる。本方法によるイオンダメージ低減の効果を検証するとともに、光電変換特性に優れたナローギャップ材料を作製する。また、昨年度設計及び組み立てを終えた高圧力欠陥処理装置による欠陥処理を合わせて検討し、光電変換素子として充分な材料特性を得ることを目指す。 光電変換特性と光吸収特性の評価が極めて重要であり、最終年度には5倍以上の光感度と単結晶ゲルマニウム並みの光吸収係数の達成を目標とする。また、本研究の目的である光電変換素子を実現するため、発電層としてのゲルマニウム半導体に適した素子構造の設計を進めると伴に光電変換素子の試作を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費は主に実験用の材料費、実験装置の保守改修費、分析費及び成果発表と情報収集のために学会出張に用いる予定である。
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