研究課題/領域番号 |
23560058
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
吉門 進三 同志社大学, 理工学部, 教授 (00158403)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 小型x線源 / 熱励起 / x線強度の増大 / x線強度の安定化 |
研究概要 |
(1)本研究で製作している小型x線発生装置の筐体内面の金属に,本年度購入した管球タイプの微弱強度のx線発生装置からのx線を照射するための治具の製作を行った。(2)複数個のLiTaO3単結晶を用いたX線発生法において,温度変化を適切に制御することでX線が連続的に発生した。また,結晶が対向配置になるように結晶を用いた場合,総カウント数の再現性が向上した。また複数個のLiTaO3単結晶を用いたX線発生法において,発生するX線の強度はチャンバーの材質よりも,ターゲットの材質(仕事関数)と形状に大きく影響されることが分かった。また,円錐型ターゲットを用いる場合,その頂角は温度変化幅によって最適値が異なるため,温度変化幅を考慮して設計する必要があることが明らかとなった。(3)結晶の温度が周期的に変化する場合,温度の時間変化をフーリエ級数で表すことで,z面の理想的な面電荷密度の変化を計算することが可能であり,面電荷密度は温度変化の周期と同じ周期で変化することが明らかとなった。(4)+z面,-z面のいずれの場合についても加熱中と冷却中でX線発生のメカニズムが異なることが分かった。すなわち,+z面使用時は加熱中に気体の電離による電子の生成,及び+z面から電子が放出され,冷却中には結晶周囲の気体の電離によって電子が生成され,これらがX線発生に寄与する.逆に,-z面使用時は加熱中に結晶周囲の気体の電離によって電子が生成され,冷却中には気体の電離による電子の生成,及び-z面から電子が放出され,これらがX線発生に寄与する。(5)X線発生の不安定性の原因の1つは放電であることが判明した。放電には持続的な放電と,瞬間的に起こる放電があり,後者は主に沿面放電であり,X線発生を不安定化させ,結晶表面を破壊する。沿面放電の原因として,温度変化幅が大きすぎる,及び表面における正電荷の蓄積が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究に従事した大学院生の多大な協力により,当初の予定よりさらに多くの知見が得られるとともに,各実験結果に対して深い考察がされたために,研究が予想以上に進展した。 本年度購入した管球タイプのx線源から,本研究で製作している小型x線発生装置へのx線照射するために製作した治具が,少しの改良で良好に動作したことにより,次段階の研究への大きな進展が期待された。 結晶表面の電荷分布を実測ではなく,現象論的ではあるが,理論的に評価可能な方法が開発されたために,温度変化の周期あるいは温度差の最適化への目途がついた。 x線強度の不安定性の主要因が,結晶近傍における放電による絶縁破壊であることが分かったために,結晶の配置,ターゲットの形状,温度変化のスパン等について極めて重要な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度購入した管球タイプのx線源から,本研究で製作している小型x線発生装置の内壁にx線を照射すると,光電効果により,筐体材料から光電子が結晶表面とターゲット間の空間に放出されるが,これらの電子は,結晶の温度変化により形成される電界に対して逆向きの電界,すなわち反電界を形成する。したがって,各電子に印加される電界は結晶が形成する電荷にこの反電界を加えた電界となる。したがって,x線強度が最大になる放出電子量に最適値が存在すると考えられる。今後,管球タイプのx線源から照射されるx線強度を変化させて,本小型x線装置のx線発生強度の変化を調べる。 以上により得られた知見を用いて,外部のx線源からではなく,複数の結晶を用いたx線源を組み合わせことによる自励式電子放出機構をつくり,あたかも,前置増幅装置と主増幅装置のような機構を構成し,x線強度の増大と安定化を有する,小型x線装置の試作を行う。また,負帰還の機構を導入して,常に最適電子放出量を制御する機構の開発を行う。 平成23年度の成果をさらに見直し,結晶の温度変化の周期,デューティ比,温度変化のスパンの最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
自励式電子源を有する小型x線装置の試作等を行うために,必要な部品,LiTaO3単結晶,ペルチェ素子等の電子部品の購入を行う。また本試作機と評価装置を接続するためのインターフェイスの製作を外注する。 装置の設計,組立,評価を行う大学院生に対して謝礼を支払う。(880円×300時間) 2回の国内会議(応用物理学会を予定)および1回の国際会議において成果の公表を行うための旅費とする。 研究成果を論文として発表するための投稿料等に支出する。
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