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2012 年度 実施状況報告書

焦電性単結晶を用いた小型X線源の高効率化

研究課題

研究課題/領域番号 23560058
研究機関同志社大学

研究代表者

吉門 進三  同志社大学, 理工学部, 教授 (00158403)

キーワードX線発生装置 / 焦電性結晶 / 小型化 / 光電効果 / 沿面放電 / 強度の安定化 / 連続発生
研究概要

本研究では、X線発生のメカニズムを検討し、再現性が悪い原因について調べた。また、X線発生の不連続性を改善するため、複数個の焦電性結晶を用いてX線発生を行い、その特性を調べた。その結果以下の結論を得た。
発生装置の筐体にX線が照射されたときに発生する光電子のX線発生への寄与を調べるために、強度が微弱な管球タイプのX線源を用いて、フィラメント電流とX線発生強度との相関性を調べた。その結果、適度の量の光電子の発生はX線強度の増加と安定性に寄与することが確認された。焦電性結晶の温度が周期的に変化する場合、結晶の電気面であるz面の理想的な面電荷密度の変化を計算することが可能であり、面電荷密度は温度変化の周期と同じ周期で変化することが分かった。温度変化の周期Lの大小関係によって、面電荷密度の変化の仕方が変わることが分かった。+z面,-z面のいずれの場合についても加熱中と冷却中でX線発生のメカニズムが異なることが、冷却中には気体の電離による電子の生成及び-z面から電子が放出され、これらがX線発生に寄与する。X線発生の不安定性の原因の1つは放電であることが,X線発生強度と結晶からの放電光との相関性からほぼ確実であることが分かった。放電には持続的な放電と、瞬間的に起こる放電がある。後者は主に沿面放電であり、X線発生を不安定化させ、結晶表面を破壊する。沿面放電の原因として,結晶表面における正電荷の蓄積が考えられる。特に,正電荷の蓄積はX線強度に周期的な変動を引き起こす原因となると考えられる。これを改善するために、温度変化の周期を変化させた結果、安定性が極めて良好なる周期が見いだされた。複数個のLiTaO3単結晶を用いたX線発生法において、結晶を3個または6個用い、温度変化を適切に制御することでX線が連続的に発生した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

1方向に分極を揃えた焦電性結晶を温度変化させることにより、高圧電源を使用せずともX線が発生することが見いだされていた。従来の電子発生部と電子加速部が別々ないわゆるレントゲン方式のX線発生装置とは異なり、本方式では、X線発生が断続的であることと、発生するX線の強度弱く且つ不安定であることが最大の欠点である。本研究によって、3~6個の結晶を一つの発生装置内に適宜配置し、結晶の温度変化の位相を適宜ずらせることにより断続性は改善された.またその際にここの結晶により発生するX線は、他の結晶が設置されている近傍での物質から光電子の発生させる役割を持つことが平成23年度に購入された従来のレントゲン方式の管球タイプの低強度X線源を用いた行われた本研究から明らかになった。またこれにより結晶表面に蓄積する電荷により発生する沿面放電もかなり抑制することが可能であることが分かった。したがって、本研究の成果を用いることにより、連続性が良好で、X線強度が安定な小型X線源を作製する目途がついた。今後は、種々の条件の最適化を図る。

今後の研究の推進方策

微弱な強度の管球タイプのX線源を本X線発生装置に付加して、光電効果の寄与の調査を行った結果、光電子がX線強度の高強度化と沿面放電の抑制に効果があることが客観的に確かめられた。しかし,光電効果による電子発生の装置内部での最適な位置に関する情報は得られていないので、それを明らかにする。
平成24年度の研究成果にから、光電効果による光電子をうまく利用するX線発生装置のアイデアを得た。3,6結晶方式では、金属ターゲットの形状が錐であったが、1枚の箔の形状にして、3個の結晶により発生するX線による光電効果が最大限生かせると考えられる装置である。その根拠は、X線は、電子が箔に衝突する際に、箔の裏側からもほぼ同強度のX線が発生することが分かっている。またその強度は余弦則に従うことも分かっている。したがって、結晶と箔の配置を適宜工夫することにより、光電効果が最大限生かせると考えられる。
X線発生装置の製品化に繋がるプロトタイプの作製を真空管の作成技術を有する業者に依頼する。封入タイプと、排気タイプの2種類を作製する。プロトタイプのX線発生装置の試験を行い、その結果を踏まえて前述の3結晶タイプのX線発生装置のプロトタイプの作製も試みる。

次年度の研究費の使用計画

1.種々の試験に必要な温度変化を行うためのサーモモジュールおよび、焦電性結晶を購入する。
2.試験装置作製のための特注部品の購入を行う。
3.試験の補助を行う大学院生に,対価として謝礼を支払う。
4.X線発生装置プロトタイプの作製に必要な部品の購入および作製費を支出する。
5.研究成果を国内会議および国政会議にて発表するための旅費として支出する。また成果を論文化するための印刷費として支出する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Effects of Electrostatic Discharge on the Stability of Pryoelectric-induced X-ray Emission in LaTiO3 Crystals2013

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Honda, Yoshikazu Nakanishi, Shinji Fukao, Yuuki Sato, Yoshiaki Ito and Shinzo Yoshikado
    • 雑誌名

      Key Engineering Materials

      巻: 566 ページ: 245-248

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Improvement of the Stability of X-ray Emission by Thermal Excitation of a Pyroelectric Single Crystal2013

    • 著者名/発表者名
      Fumihiko Naruse, Hiroyuki Honda, Yoshikazu Nakanishi, Shinji Fukao, Yuuki Sato, Yoshiaki Ito and Shinzo Yoshikado
    • 雑誌名

      Key Engineering Materials

      巻: 582 ページ: 174-177

    • 査読あり
  • [学会発表] LiTaO3 単結晶を6 個用いたX 線発生における強度の改善2013

    • 著者名/発表者名
      成瀬 史彦,本田 博敬,深尾 真司,中西 義一,佐藤 祐喜,伊藤 嘉昭,吉門 進三
    • 学会等名
      第60 回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      神奈川工科大学
    • 年月日
      20130327-20130330
  • [学会発表] 焦電性結晶の熱励起によるX線発生における強度および安定性の改善2012

    • 著者名/発表者名
      成瀬史彦,本田博敬,中西義一,深尾真司,伊藤嘉昭,佐藤祐喜,吉門進三
    • 学会等名
      第32回エレクトロセラミックス研究討論会
    • 発表場所
      東京工業大学大岡山キャンパス
    • 年月日
      20121026-20121027

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公開日: 2014-07-24  

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