研究課題/領域番号 |
23560060
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
外山 滋 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 障害工学研究部, 研究室長 (50360681)
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研究分担者 |
中村 隆 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 義肢装具士 (40415360)
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キーワード | センサ / 剪断力 / 電解質 / シート |
研究概要 |
センサの設計指針を得るために、3次元有限要素法を用いたシミュレーションを行った。センサを構成する部材(電極基板や隔壁材料)の機械的特性を用いた構造変形のシミュレーションを行った後、さらにセンサ内部の電流密度を計算するという2段階のシミュレーションである。センサを構成するそれぞれの素材の弾性係数、ヤング率が計算中に必要となるため、文献検索、製造会社への照会、あるいは実測することで数値を決定した。ソフトウェアはPDE Solutions Inc.のFlexPDE version 6.15を使用し、コンピュータはCPU: Core i7-3960X 、メモリ32GB,OS: Windows7 64bit版を使用した。シミュレーションの結果から、中層のPETフィルムの変形はデバイス上部に存在するPPリングによるものが大きいことが示された。これはセンサ設計当初の予想に一致する。特に、センサの変形量については、加える剪断応力に比例して増加する結果となった。得られた変形に基づき、各剪断応力を加えた際の電流密度変化について、現在計算を行っている。また、センサの電極の幅については、センサの厚みを薄くすると、エッジ部への集中が高まることが予想された。このことから、センサを薄くすると電極幅を狭くできるため、水平方向での小型化も同時に可能になることが示唆された。 一方、センサ周辺回路のさらなる小型化を行った。これまではアナログ回路であったが、基本的にはマイコン基板を用いたディジタル回路が中心のシステムである。これにより、今後のマルチセンサに対応するための基盤が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、フレキシブルで厚みの薄い剪断力センサを開発することである。交付申請書によれば、24年度までに①剪断応力とセンサ出力との関係の明確化、②回路を含めたセンシングのための測定システムの開発、③プロトタイプセンサの義足への組み込みと評価、④シミュレーションに基づく電極構造の最適設計、⑤センサのダウンサイジングとアレー化、⑥改良型センサシステムの義足への組み込みと評価が挙げられている。 必ずしもこれらの当初の目標に合致した形にはなっていないが、これまでに以下の様な結果がえられており、一定の進展をしているものと考えている。 まず、これまでに二次元、および三次元有限要素法によるシミュレーションを実施しており、定性的ではあるが一定の結論を得ている。実際の試作により剪断力とセンサ出力の間にリニアな関係を示すデータが得られている。このことからセンサの基本設計の正しさが確認された。サイズとしては、最小のもので厚さ1mmで直径が1円玉サイズのものを試作した。また、アナログ回路、次いでデジタル回路にて測定システムの小型化を行い、さらに改良中である。応用としては、義足そのものではないが、開発した剪断力センサにて足下の剪断力を測定し、試作センサにて歩行状況に関連する測定が可能であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書では、本年度の研究内容として、応用計測を通してのセンサの有用性の実証を掲げており、特にこの点を進める考えである。 なお、現在、もっとも大きな問題は、加工精度がセンサの小型化に大きな影響を及ぼしていることである。同じ特性のセンサを半分のサイズで作製するには2倍の加工精度が必要である。加工精度に影響を及ぼす因子としては、センサを構成する各部材の切断加工、部材間の接着時の位置合わせ(アラインメントの問題)、接着剤の塗布作業、電解質の注入作業などである。そこで、本年度はセンサ開発者の熟練に頼らないセンサの作製方法について検討を行う。その方法としては、レーザー加工による部材の切断、ディスペンサーによる接着剤の精密塗布などを想定している。 なお、剪断力センサ以外のセンサ(同じく電解質を用いる)を同一の基板上に作製することも検討したい。具体的には圧力センサと温度センサである。
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次年度の研究費の使用計画 |
大きく分けると、センサの応用開発のための費用、センサの加工精度向上のための費用が必要となる。応用開発としてはまずは義足への組み込みを考えており、各種ブラスチック材料などを購入することとなる。また、加工精度向上のためには、ディスペンサーの消耗品や精密な部材間のアラインメントのためのジグ類の購入が必要となる。その他、昨年度までと同様にセンサを試作するための各種消耗品が必要となる。なお、センサの電極を蒸着により作製するための貴金属材料の補充が必要となる見込みである。 その他、これまでの研究成果の発表のための学会参加費、論文作成費(学会誌投稿費、英文校正費)などとして使用予定である。 なお、昨年度に未使用の予算が発生したが、年度をまたいでの処理が多かったためである。例として、昨年度アクセプトされた論文の掲載費が必要となる。また、5月の海外発表のための費用も予想されたことから、年度を超えて利用することとした。
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