研究実績の概要 |
今年度はジョルダン問題およびクロネッカ問題の応用に関して以下の成果を上げた。
ジョルダン問題の応用として、m×n型行列Aとn×m型行列Bから成る行列対の標準形を決定し、また、対応する基底を構成するアルゴリズムの設計を行った。基本的なアイディアは、行列積BAはn次正方行列になることから、本課題でこれまでに既に構築したジョルダン基底計算アルゴリズムを利用してBAのジョルダン基底を構成し、それをベースに行列対A, Bの標準形および対応する基底を決定する。ここで構築したアルゴリズムは次のような場合に一般化可能である。すなわち、加算個の行列 A, B, …, Cに対し、行列積AB…Cが定義可能で、また、この積が正方になる場合、A, B,…, Cの標準形を決定するとともに、対応する基底を構成するために活用できる。
クロネッカ問題の重要な応用対象である一般固有値問題の応用として、前年度に設計した2つの平面代数曲線の交わり、ないしは、2つの空間代数曲面の交わりを計算するためのアルゴリズムの実装、数値実験、改良を行った。2つの平面代数曲線の交わりについては、曲線の一方が(あるgenericな条件を満たす)2次曲線の場合には当該2次曲線を中心が原点の単位円に射影変換することで、交わりを高精度に計算できることを確認した。また、2つの空間代数曲面の交わりについては、両者が2次曲面の場合を主として考察し、交わりを導出するために必要となる連立一般固有値問題の共通固有ベクトルから交わりの情報を系統的かつ高効率に導出する方法の検討を行い、プレリミナリながら、数値実験の結果、提案法がうまく機能することを確認した。
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