研究課題/領域番号 |
23560065
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
加藤 初弘 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (00270174)
|
研究分担者 |
加藤 初儀 苫小牧工業高等専門学校, 理系総合学科, 教授 (80224525)
|
キーワード | 逐次伝達法 / 数値計算法 / 散乱問題 / マイクロ波 / 弾性波 / Fano共鳴 |
研究概要 |
本研究の目的は,新しい数値計算法である逐次伝達法の開発,および,これをマイクロ波(ベクトル波)および弾性波(テンソル波)に適用し有効性を確認することである.平成25年度の主な目的は,これまでの2年間の成果を論文などで公表することである.また,理論および数値解析で得られた結果を実験的に確認することも目指した. 平板の理論的定式化は19世紀にKirchhoffが行い,Mindlinにより厚さ方向を考慮しつつ20世紀に拡張されている.本研究で提案した新しい定式化は重調和解析を拡張するという立場であり,数値計算における応用は勿論のこと数学的にも新たな研究が開ける可能性がある.これらの研究結果を電子情報通信学会欧文論文誌に2編投稿し,うち1編は掲載が決定されている.また,数学的な観点を強調した論文を応用数理学会の研究集会にて発表するとともに欧文レター誌にも投稿中である.いずれも,論文に関して多くの質問が寄せられ,重調和解析の世紀をまたぐ議論に関心が集まった. 昨年度に行った円柱構造における弾性散乱の研究は,液体への透過現象に関する議論に発展した.等価インピーダンスの新しい表現を提案でき,その実験的な確認も行うことができた.これらの結果は日本物理学会欧文論文誌で出版した.さらに,弾性平板における屈曲波の実験も実施し,共鳴反射と呼ばれる特徴的な現象を伴った共鳴現象乱を確認した.これに関連する論文が,先に述べた電子情報通信学会欧文論文誌に投稿したもののうち査読中の1編である.この論文は査読者から「内容は掲載するに申し分ない」と評価されている. 昨年度に実施した化学反応容器におけるマイクロ波吸収の研究を発展させるものとして,Fano共鳴の新しい解析方法を提案した.この結果は電子情報通信学会欧文論文誌に受理され現在印刷中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
数値計算環境に関する整備により,さまざまなシステムに対処できる数式処理技術が著しく進展した.この技術により,マイクロ波,弾性波,電子波などに関する解析プログラムを統一的に作成できるようになり,プログラム作成時間特にバグの処理に要する時間を抑えることができるようになった. 逐次伝達法に関する理論的な定式化は,スカラー波およびテンソル波に関してほぼ順調に進んだ.一方,マイクロ波を一般的に解析するために必要なベクトル波に関する定式化を完成させることはできなかった.しかし,マイクロ波に関する研究は,化学反応におけるマイクロ波照射装置および揮発性有機物などの分解装置の設計へと進展している. 逐次伝達法の特徴である局在波の抽出をFano共鳴の解析に応用できることが明らかになった,この研究により,弾性波の散乱現象をFano共鳴として解析する研究がスタートしているばかりか,その他の物理的なシステムでもFano共鳴を逐次伝達法で解析できる可能性が開けた. 以上,逐次伝達法のベクトルへの対応につては必ずしも完成していないが,マイクロ波照射装置への応用,重調和解析の拡張,Fano共鳴の新解析方法の提案という当初予想していなかった成果があり研究自体は大きく進展した.
|
今後の研究の推進方策 |
研究成果を公表する際に多くの疑問や指摘があった.それらは,逐次伝達法と有限要素法の差異や重調和解析の拡張に関するものであった.このため,論文の査読に2年を超す時間を要し,一部は現在も査読中である.この結果,本研究テーマの実施時期を延長した.その目的は論文出版経費を科学研究費により処理することにある.従って,次年度(平成26年度)の目的はこの論文の出版であるが,その論文も現在印刷中であり,この意味で目標は達成されている. 一方,研究の内容自体は今後大きく2つの方向に推進できる.一つは,マイクロ波の応用技術,もう一つは,Fano共鳴の解析を通じて逐次伝達法の適用範囲を拡張することである.より具体的には,スピン波などの散乱現象を屈曲波で開発した技術で実施することを計画している.
|
次年度の研究費の使用計画 |
査読の長期化により論文出版の時期が次年度となったため. 出版を待っている論文の出版経費として使用する.なお,この論文の掲載は決定済みである.
|