研究課題
理工学においては,現象を理解するために数理モデルが作られ,これらのモデルを解くことによって,未知の現象の予測や新たな工学的製品の設計等が可能となる.これらのモデルは解析的な手法で解くことが困難であるため,計算機を用いた数値計算により解かれることが多い.計算機を用いた数値計算では,その計算は正確には行われない.四則演算の結果はその都度有限桁に近似され,極限を含む無限演算は全て有限演算に近似される.計算結果から正しい結論を得るためには,計算結果の誤差評価を行って厳密解の存在範囲を確定する必要がある.これを行う手法が精度保証付き数値計算法であり,従来の数値計算の枠組みでは近似解を求める道具であった計算機を用いて厳密解をも捉えることを可能にする.平成24年度において,研究代表者はシルベスター方程式の解に対する精度保証付き数値計算法を確立した.シルベスター方程式は連立1次方程式,複数の右辺ベクトルをもつ連立1次方程式,逆行列の計算,固有ベクトルの計算,交換行列の計算等,数値線形代数学上の重要な問題を多く含む.さらに,この方程式は制御理論,モデルリダクション,画像処理等,科学技術の分野に広く現れる.このような問題に対して,確立した手法は理論的厳密性の伴った解を高速に与える.シルベスター方程式の解に対する精度保証付き数値計算法については先行研究が存在する.この手法では,解を包み込む集合が試行錯誤により決定されていた.これに対して,研究代表者が確立した手法では,この集合が解を包み込むように自動生成される.
2: おおむね順調に進展している
平成23年度の実施状況報告書における「今後の研究の推進方策等」欄に「シルベスター方程式における解の精度保証付き数値計算法を確立する」と記述した.平成24年度にこれが達成されたため.
固有値問題に関する知見が応用できる他の数値線形代数学の問題(例えば代数リカッチ方程式や最小二乗問題)における解の精度保証付き数値計算法を確立する.
主に,研究成果を国内外の学科で発表するための旅費として使用する.
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
Reliable Computing
巻: 18 ページ: 9-14
Linear Algebra and its Applications
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.laa.2012.07.001
巻: 16 ページ: 107-113
巻: 16 ページ: 102-106