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2012 年度 実施状況報告書

シリコン貫通電極作成のためのマルチスケールシミュレーションシステムの開発と応用

研究課題

研究課題/領域番号 23560067
研究機関京都大学

研究代表者

金子 豊  京都大学, 情報学研究科, 助教 (00169583)

キーワードシリコン貫通電極 / モンテカルロシミュレーション / 電気化学 / めっき / 添加剤
研究概要

本研究では、次世代高集積化LSIチップの実現を可能にすると期待されるシリコン貫通電極(Through Silicon Via、TSV)作成のための動的モンテカルロシミュレーションシステムの開発と、それを用いたTSV作成の最適条件の探索を目的としている。
今年度は昨年度に作成したシミュレーションプログラムを用いて、TSV作成のシミュレーションを行い、結果を実験結果と比較検討した。特に複数の添加剤の共同作用に注目して、系統的にシミュレーションを行い、結果を解析して埋め込み条件を検討した。
添加剤は、塩化物イオン(Cl-)、抑制剤(Polyethylene Glycol、PEG)、促進剤(bis-(3-sulfupropyl)-disulfide、SPS)、平滑剤(SDACC)を取り入れた。CuClPEG は電極表面に吸着し、銅イオンの析出を阻害する抑制剤として働く。SPS はCu(I) と結合して Cu(I)Thiolate となり、電極表面で触媒作用を持ち、銅の析出を促進する。また、平滑剤 SDACC の新しいモデル化として、PEG との相関を取り入れた。すなわち、SDACC はそれ自身抑制効果を持つと同時に PEG の抑制作用を増幅する作用をもつとした。
添加剤の条件を変えて、系統的なシミュレーションを行った結果、埋め込み性の平滑剤の濃度依存性は実験結果とよい一致が見られた。また、パルス電流、逆パルス電流を印可したシミュレーションを行った結果、パルス波形とTSVの埋め込み性の関係は、実験結果と一致することが確かめられた。以上のことから、本研究で開発したシミュレーションコードは実験結果をよく再現することがわかった。
これらの成果を、アメリカ電気化学会(th 221th ECS Meeting、PRiMe 2012)で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、昨年度に開発したシミュレーションプログラムを用いた計算を行い、結果を実験結果と比較するとともに、TSVの良好な埋め込みを実現する条件の検討を行った。
シミュレーションと実験との一致は良好であり、実験で報告されている空孔の無い埋め込み(superfilling)が、シミュレーションでも再現できた。また、埋め込み性の、添加剤濃度や電流波形への依存性も実験結果とよく一致した。よって、開発したシミュレーションコードは、本研究の目的であるTSV作成の最適条件の探索に有効であり、さまざまな形状の via 埋め込みの最適条件の探索に有効であることが分かった。
シミュレーションでは、電析途中の添加剤の分布、局所過電圧と電流密度の分布など実験では直接測ることのできない情報も調べることができるため、良好な埋め込みを実現するミクロなメカニズムを理解することができ、それが新しい形状のvia の埋め込みの最適条件探索を容易にすると考えられるので、次年度は TSV 作成に関する多くの知見が得られることが期待できる。
上記の理由により、本研究はほぼ順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

最終年度は、攪拌の影響、溶融酸素による添加剤の分解に注目して、系統的にシミュレーションを行い、結果を解析して埋め込み条件を検討する。
1.攪拌の影響 : 上で述べた添加剤の最適な分布を実現するためには、溶液の攪拌(実験では回転電極)の影響が無視できない。本モデルでは、溶液中でのランダムウォークの遷移確率を操作することにより溶液中に容易に流れを作ることができる。流れのパターンと添加剤の分布、埋め込み性との関連について解析する。
2.溶融酸素による添加剤、イオンの分解 : 銅イオンが還元される際の中間生成物である一価イオンCu+ 、促進剤となる Thiolate は溶液中の酸素により分解する。これが、孔の内部と外部の添加剤の分布の差を生ずる原因ともなっている。本研究ではこの点の考慮し、溶液中の酸素の含有量とその時間変化をパラメータとして取り入れ、より現実的なシミュレーションを行う。
3.双パルス電流 : ダマシンめっきや TSV のような埋め込みには、双パルスめっきが有効であることが知られている。これは、正電流と負電流を交互かける方法であり、濃度勾配を解消して拡散律速になるのを防ぐとともに、負電流の際に突起部が優先的に溶解するため表面が平滑化され、空孔を生じにくくする作用を持つ。 本研究でも、双パルスを取り入れ、正負の電流値とその周期をパラメータとして、埋め込みに対する最適値を調べる。 その結果を整理して、TSV作成の最適電析条件をまとめ、実験に対する提案とする。

次年度の研究費の使用計画

今年度は、前年度までに作成したシミュレーションコードを用いて、TSV作成の最適条件を探索するシミュレーションを系統的に行う。計算には初年度に購入したワークステーションを用いる。そのデータ解析と結果の動画化のための操作性の良いデスクトップパソコン、グラフィックスソフトウエア購入の費用を計上している。
また、日本電気化学会、アメリカ電気化学会をはじめ、国内外の幅広い学術会議での成果発表のための、ラップトップパソコン購入の費用、および、そのための旅費も計上している。今年度は本研究課題の最終年度に当たるため、その成果報告書作成のための費用も計上している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Kinetic Monte Carlo simulation of three-dimensional shape evolution using Solid-by-Solid model: Application to via and trench filling2013

    • 著者名/発表者名
      金子豊、樋渡保秋、小原勝彦、浅富士夫
    • 雑誌名

      Electrochimica Acta

      巻: 100C ページ: 321-328

    • DOI

      10.1016/j.electacta.2013.01.076

    • 査読あり
  • [学会発表] 動的モンテカルロ法によるLSI配線用銅めっきの分子シミュレーション2012

    • 著者名/発表者名
      金子豊
    • 学会等名
      電子材料めっき研究会
    • 発表場所
      大阪府立大学
    • 年月日
      20121101-20121101
    • 招待講演
  • [学会発表] Synergistic Effects of Additives on the Filling Process of High-Aspect-Ratio TSV - Kinetic Monte Carlo Simulation -2012

    • 著者名/発表者名
      吹上悠貴、金子豊、林太郎、近藤和夫、小原勝彦、浅富士夫
    • 学会等名
      Pecific Rim Meeting on Electrochemical and Solid-State Science
    • 発表場所
      Honolulu (USA)
    • 年月日
      20121007-20121012
  • [学会発表] Multi-Scale Simulation of Synergistic Effects of Additives in Damascene Electroplating2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Kaneko, Y. Hiwatari, K. Ohara and F. Asa
    • 学会等名
      The 221th Meeting of the Electrochemical Society
    • 発表場所
      Seattle (USA)
    • 年月日
      2012-05-07

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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